第7章 相変わらずな君と僕【リヴァイ】
何か音が聞こえた気がして、俺はゆっくりと目を開けた。
寝起きのぼんやりとした意識の中で、が置いて行ったものを片付けた後、黒いトートバッグを抱きしめたまま、眠ってしまっていたのだと知る。
インターホンが鳴っている音に気づいて、俺は面倒くさいと思いながら、のそのそと身体を起こした。
変な時間に寝てしまったから身体がダルい。
黒いトートバッグをソファに置いて、誰が来たのかを見もしないでインターホンの応答ボタンを押した。
「はい。」
≪あ、私…っ。…っ。≫
聞こえてきた懐かしい細い声に、俺は思わず顔を上げた。
インターホンのテレビ画面に映っているのは、だった。
俺の家に遊びに来ていた頃は、カメラの方を向いて可愛らしく手を振っていたが、今は目を伏せていて、長い前髪で表情も見えない。
聞こえてくる声は俺の知っているのままだったのに、もうあの頃とは関係性が大きく変わってしまったのだと思い知らされた。
「あぁ…、どうした?」
≪リヴァイの家に荷物を置いたままだったから、取りに来たんだけど…っ。
もし、忙しいんだったら今度でも…っ。≫
「今、開ける。」
短く返事をして、開錠ボタンを押した。
すぐに、テレビ画面は映らなくなって、の姿が消える。
俺は、リビングのソファの上に置かれた黒いトートバッグを見やる。
長い間ずっとすれ違い続けていた俺達が、今日に限っては同じことを考えていたなんてー。
今から、が家に来るかと思ったら、初めてを家に呼んだ時よりも緊張した。
会いたい。早く、今すぐ。
でも、来ないで。
俺が必死に集めたの欠片すら、俺から奪ってしまうのならー。
もうこれ以上、ひとりぼっちになりたくない。
に出逢う前までは、1人でいるのが普通で、楽だったはずなのに。
と一緒にいる頃は、1人になりたいと思っていたはずなのにー。