第7章 相変わらずな君と僕【リヴァイ】
黒いトートバッグの中を漁る俺は、傍から見たら必死過ぎて笑えたと思う。
でも、思いついてしまったのだ。
とてつもなく虚しくて、情けなくて、格好悪くて、でも、俺に唯一出来るを感じられる方法をー。
残りが少なくなった香水の瓶を見つけた俺は、慣れない手つきで自分の手首につけた。
その途端に、の香りがふわりと俺の身体を包んだ。
そのまま、の欠片を集めて詰め込んだ黒いトートバッグを抱きしめれば、香りがさらに強くなった気がした。
そういえば、まだ仲が良かった頃は、よくこうして抱きしめていたなー。
眠たくなったからとか、逆に眠れないからとか、お腹が空いたからとか、暇だからとか、理由なんてあってないようなものだった。
それでも、我儘に抱きしめる度に、は俺の腕の中で嬉しそうに笑っていた。
化粧もしていない素の笑顔が可愛くて、愛おしくて、仕方なかった。
(あぁ、そうか…。)
あまりにも簡単すぎることに、今さら気づいた俺は、黒いトートバッグを抱きしめたまま、ゴロンとソファに横になった。
俺がを抱きしめていたのは、が好きだったからだ。
大好きで大好きで、可愛くて仕方がなくて、愛していたから、俺は抱きしめていた。
それなら、背中を合わせて眠るようになった頃の俺は、を好きじゃなくなっていたのだろうか。
抱きしめようともしなくなったというのは、そういうことだろうか。
「…。」
俺の声はもうには届かないと分かっていて、名前を呼んでしまう。
あの頃は、それすら出来なかった。
名前を呼んでも、すぐそこにいるに振り向いてもらえなかったら悲しくなると思ったからだ。
臆病な俺は、自分が傷つくのが怖くて、に触れられなかったー。
だって、背中越しに感じるの気配すら、俺は愛していたからー。
今もこうして、の欠片を抱きしめて、もう一度だけでいいから会いたいとひたすら願ってしまうくらいにー。