第6章 相変わらず【リヴァイ】
あぁ、もう本当にー。
この人のどこが、完璧な人間なんだろう。
本当はだらしなくて、強いどころかすごくもろくって、弱くて、生活力なんて掃除以外は壊滅的だ。
挙句の果てには、元カノを抱きしめて、お昼ご飯を作ってくれって泣きそうな声でお願いする。
本当に、どうしようもない人。
私が知っているリヴァイは、私だけに見せてくれた本当のリヴァイは、すごく優しくて、すごく人間臭い、誰よりも温かい人ー。
≪乗らないんですか?≫
バスの運転手の面倒くさそうな声に、私もリヴァイも答えられなかった。
だって、胸が痛くて苦しくて、喉が詰まっていたから。
呆れたのか、見捨てたのか、目的地へ向かう乗客を乗せたバスが走り去って、私達は排気ガスの匂いが鼻と目に痛いバス停に、取り残された。
「私、いっぱい我儘言うよ。」
「知ってる。」
「すぐに怒るよ。」
「それは俺にも原因があるし、覚悟もしてる。」
「朝寝坊もするし、なんでも適当だから汚しちゃうこともいっぱいあるし、
片付けが苦手ですぐ散らかしちゃう。」
「それは俺が得意だから問題ねぇ。」
「構ってくれないと不機嫌になるくせに、メイクを手抜きしちゃう。
いつまでも、可愛い恋人では、いてあげられないよ。」
「それはお互い様だ。それに、そのままでいい。
は、すっぴんも…可愛い…から…。」
消え入りそうな声が、耳元で微かに聞こえた。
あぁ、今のリヴァイの顔、見たいな。
きっと、耳まで真っ赤なんだろうな。
「リヴァイも、カッコいいよ。出逢ったときからずっと変わらない。
誰よりカッコよくて、強くて、世界で一番大好き…。」
胸元にまわるリヴァイの腕に手を添えて、私はすごく久しぶりに素直になった。
溢れる涙は止まらなくて、鼻水まで出て来たのに、頬と口元は緩むばかりで、顔がグチャグチャだ。
今の私はきっとすごく不細工に決まってる。
リヴァイには見られたくない。