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【進撃の巨人】Short Story

第6章 相変わらず【リヴァイ】


振り向かないと分かっている背中を数秒だけ見送って、私もリヴァイに背を向ける。
遠くにバスが見えていた。
両手で抱えた黒いトートバッグを胸元でギュッと抱きしめると、甘くて苦い紅茶の香りがぶわっと広がって、楽しかった思い出とか、悲しかったこと、リヴァイの嫌いだったとこ、大好きだったところとか、今さら苦しいくらいに愛おしい想い出になって一気に溢れた。

(やだよ…っ。まだ、ずっと、ずっと…っ、一緒にいたいのに…っ。)

リヴァイに背を向けたまま、リヴァイの匂いがする黒いトートバッグを抱きしめた私は、しゃくり上げそうになる声を必死に堪えながら、肩を震わせて泣いた。
本当は、会いたかっただけなの。
荷物をずっと取りに行かなかったのも、私の家に送ってって言わなかったのも、リヴァイの生きる空間の中に、あと数秒だけでもいいから私の欠片を残しておきたかったからなの。
だから、久しぶりにリヴァイに会えて嬉しかった。
リヴァイの部屋が、私の知っているままで、嬉しかった。
荷物が捨てられてなくて、安心した。すごく、嬉しかった。
でも、もう会えない。
もう、あの部屋には私の欠片は残ってない。
好きという気持ちさえも、背を向けて泣きじゃくる私が、想い出と一緒に1人で抱えているから、リヴァイが知ることは一生ない。
私の前にバスが停まる。
乗車口が開いた。
もう、本当にサヨナラだー。
流れる涙をそのままで、私は乗車口に片足を乗せた。

「!!」

名前を叫ばれてすぐに腕を掴まれた私は、倒れるように後ろに引っ張られた。
驚いた拍子に落としてしまった黒いトートバッグから、抱えていた思い出の品が零れて、アスファルトの上に散らばる。
すぐに背中にぶつかったのはリヴァイの胸板で、気づけば後ろから抱きしめられていた。

「俺の身体が心配なら、飯は、お前が作れ…!」

リヴァイは私を拘束するように後ろから抱きしめたままで言った。

「…め、し…?」
「俺は掃除をする。いつも綺麗な部屋で生活できるようにしてやるし、
 お前が買ってくるばっかりで使いもしねぇガラクタを入れる箱も用意するっ。
 マニキュアでテーブルを汚されても、もう怒らねぇから…っ。」

だから俺に飯を作ってー。
痛いくらいに腕に力を込めて、リヴァイは私の耳元で弱々しい声で懇願する。
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