第6章 相変わらず【リヴァイ】
付き合ってるときに、お礼を言われたことなんて一度だってあっただろうか。
少なくとも、ここ最近は何を言っても短い返事しか貰ってなかった。
棚の中から綺麗に畳まれたタオルを取り出したときに、ふわっと香ったのは私が好きな柔軟剤の匂いだった。
真っ白いタオルを顔に押しあてて、私は声を殺して、泣いた。
(どうして…っ。)
痛いくらいに唇を噛んで、ギュッと目を瞑った。
リヴァイに掴まれた手首が、まだ熱い。
相変わらず、だらしなくて、寝癖のついた髪で、疲れた顔をして、少し痩せてしまっていて、最後の最後にティーカップまで割っちゃって、馬鹿みたい。
恋人だった私が知ってしまったリヴァイのままでいるのは、やめてほしかった。
皆が思ってる完璧なリヴァイでいてくれたら、あぁ、私と別れても大丈夫だって、そう思えたのにー。
離れている時間に、ひとりきりでリヴァイのことを心配したりしなくて済むのにー。
出逢った頃みたいに格好つけてくれていたら、リヴァイの分かりにくくて不器用な優しさに今なら気づけるってことを、私が知ってしまうこともなかったはずなのだ。
だって、今さら気づいてなんになるっていうんだろう。
もう、何もかもがすべて、手遅れだというのにー。