第6章 相変わらず【リヴァイ】
外食やコンビニ弁当続きの食生活だってそれの延長だし、シャツを裏返しで着ていることなんてよくあった。
それを指摘したところで、出かけるわけでもないしお前しか見てないんだから別にいい、と着直そうとすらしない。
きっと今、リヴァイは自分の髪が寝癖で跳ねてることだって気づいてないはずだ。
本当のリヴァイは、年下の彼女に叱られてばかりのどこにでもいる普通の彼氏だった。
「それじゃ、帰るね。」
「待て、送って行・・・・っ。」
玄関へ向かうために背中を向けようとすると、リヴァイがソファから立ち上がった。
急いだせいか、リヴァイは手に持っていたティーカップを文庫本に当ててしまった。
驚いているうちに、ティーカップは床に落ちてガチャンと大きな音を立てながら粉々に割れた。
「大丈夫…!?」
慌ててバッグからハンカチを取り出した私は、濡れたリヴァイのズボンの膝のあたりを拭いた。
「悪い。もう熱くねぇから大丈夫だ。」
ズボンの上から足に触れる私の手を退けて、リヴァイがしゃがむ。
「そっか。ならよかったよ。」
安心したのは嘘じゃない。
でも、ホッとしたー。
それだけの感情しか抱かなかったフリをして、割れた破片を集めるリヴァイと一緒に片づけることにした。
「触るな…!」
破片に触れようとした私の手首を掴んで、リヴァイが声を荒げた。
ビクッとして、私の手が止まる。
「悪い…。」
すぐに、リヴァイの手が離れたけれど、久しぶりに感じた温もりに手首が熱かった。
「ううん、いいよ。大丈夫。」
「俺が1人でやるから、お前は座って待ってろ。」
「でも、一緒に片付けた方が早いよ。」
「危ねぇだろ。おれのせいで、に怪我させるわけにはいかねぇ。」
「大丈夫なのに…。でも、分かった。」
破片に触れようとしていた手をギュッと握って、引っ込める。
1人で粉々になったティーカップの破片を集めるリヴァイの横顔は、少しだけ眉を顰めているから、とても情けなく見えた。
「じゃあ、タオル持ってくるね。」
「助かる。ありがとな。」
珍しいリヴァイの感謝の言葉を背中で聞いて、私はさっき出たばかりの洗面所へ走った。