第6章 相変わらず【リヴァイ】
寝室を出た私が次に向かったのは、洗面所だった。
初めてのお泊りのときは旅行用の小さなケースに入れて持って来ていた化粧水や乳液なんかも、いつの間にか普通サイズのものを置いておくようになっていた。
食生活が乱れてるくせに肌の綺麗なリヴァイの隣に並ぶのなら、私も綺麗でいなくちゃー。
そう思って買った高い化粧水と乳液。浸透液なんていう本当に効果があるかどうかも分からない高い基礎化粧品もたくさん増えていった。
でも、やる気があるのは買うときだけで、結局、使わないままだったものがほとんどで、リヴァイにはいつも叱られていたっけ。
洗面台の鏡になっている扉を開けば、いまだに棚のほとんどを私の使いもしない高級基礎化粧品が占領していて、少しだけ笑ってしまった。
(邪魔だっただろうな。)
苦笑しながら、私はひとつひとつをゆっくり手に取って、黒いトートバッグに入れていく。
最後に残ったのは、コップに入っているピンク色の歯ブラシだけになった。
青い歯ブラシと仲良く並んでいるそれを手に取った私は、足元のゴミ箱に投げるように捨てる。
リビングに戻ると、ソファに座ったリヴァイが紅茶を飲みながら文庫本を読んでいた。
戻って来た私に気づいて、本に落としていたリヴァイの視線が上がる。
「終わったか。」
「うん、もう大丈夫。あ、歯ブラシ、捨ててもよかったのに。」
「あ~…、俺のを新しいのに換えるときに捨てればいいと思って
そのままにしてた。」
「だろうと思ったよ。リヴァイって本当に面倒くさがりだよね。」
私は呆れた様に言って、苦笑する。
本当は今も、リヴァイのそんなところが心配で堪らない。
頭も良くて、顔もいいリヴァイのことを言葉で表現するとしたら、殆どの人が、几帳面だとか、綺麗好きだとか、なんでも涼しい顔をしてそつなくこなす完璧人間って言うんだと思う。
でも、実際のリヴァイは、そんなに凄い人じゃない。
確かに潔癖なくらいの綺麗好きだけど、自分の身の回りのことには何も興味がなくて、無頓着だ。
生きてるからには、息を吸って吐いて死なない程度の栄養が取れたらいいと本気で思ってるところがある。
部屋は綺麗かもしれないけど、それ以外は適当で、誰よりもだらしがないのだ。