第6章 相変わらず【リヴァイ】
(何も思ってないか。目にも入ってないよ、きっと。)
自嘲気味に笑って、私は黒猫のぬいぐるみを手に取った。
これは、初めてのデートで行った雑貨屋さんで私が見つけて、一目惚れをして衝動買いしてしまった思い出の品だ。
『見て見て~!この黒猫ちゃん、リヴァイにそっくり!
目つきが悪いところとか!』
『…なら、この白いやつはにそっくりだな。
・・・・・・・・アレとか。』
『ないのかよ!』
『うるせぇー。ある…。可愛い、ところとか…。』
軽い冗談のつもりでツッコんだ私に、顔を真っ赤にしたリヴァイが、消え入りそうなか細い声でそんなことを言うから、私まで伝染したみたいに顔が真っ赤になってしまって、2人とも目も合わせられなかった。
それから、一目惚れした黒猫のぬいぐるみがどうしても欲しくなって、真っ赤な顔でレジに並んだ。
リヴァイもこっそり白猫のぬいぐるみを買っていて、家に連れて帰った後、このベッドのヘッドボードに2人で並べたのだ。
あれから今日まで、ずっと、2匹の猫は、あの頃の私とリヴァイみたいにいつもピタリとくっついて、私達のすべてを見守ってくれた。
それなのにー。
あぁ、隣に並んでいたはずの私とリヴァイはいつから、背中をピタリと合わせるようになってしまったんだろう。
なんとか手を繋いで離れないようにしたところで、背中合わせのままでは顔も見えないから、相手が求めていることも分からない。
そんなんじゃ、優しくしてあげることなんて、私もリヴァイも出来るわけがなかったのにー。
「紅茶が出来た。飲むか。」
開いた扉から、リヴァイが声をかけた。
涙が溜まりかけていた目を慌てて擦って、振り返る。
「大丈夫だよっ。荷物取ったら帰るからっ。」
「そうか。」
興味なさそうに言って、リヴァイが扉を開けたままリビングへと戻っていく。
やっぱり、飲みたいって言えばよかったかなー。
少しだけ後悔したけれど、選択を間違えたとは思わない。
早くこの家から出て、リヴァイから離れたかった。
リヴァイのところに残してしまったすべてを、早く返してもらわなきゃ、いけないからー。