第6章 相変わらず【リヴァイ】
相変わらず、綺麗な部屋だ。
塵ひとつ落ちていないどころか、テーブルとソファ、テレビくらいしかない。
リヴァイの部屋はつまんないと文句を言ったら、これだけあれば問題ないのだから余計なものは要らないと言われたことがある。
私は今、その『余計なもの』になってしまったのかもしれない。
リビングを見渡しながら、私は出来る限りの笑顔を作ってリヴァイに話しかけた。
「ごめんね、急に来ちゃって。荷物、送ってもらおうかなぁとも思ったんだけど、
リヴァイにお願いしたら、忙しいとか言っていつまで経っても
送ってくれない気がしてさ。それに、思い立ったが吉日って言うし。」
「あぁ、そうだな。」
短い返事で会話が終わって、リヴァイは奥のキッチンへと行ってしまった。
トートバッグの持ち手をギュッと握って、私は笑顔を崩さないことだけに集中する。
さっきリヴァイが言った通り、殺風景なリビングにはもう、私の欠片は残っていなかった。
後はー。
寝室の扉を見て、ドキリと心臓が鳴る。
あの扉の向こうで、私は何度も何度も、数えきれないくらいにリヴァイに抱かれた。
今はもう、そこで違う誰かを抱きしめたりしているのだろうか。
私は、キッチンのカウンターに行ってから、リヴァイに声をかけた。
「ねぇ、リヴァイ。」
名前を呼ぶと、紅茶を作っていたらしいリヴァイが顔を上げた。
カウンター越しに見えたキッチンの奥に無造作に置かれたゴミ袋、その中に幾つものコンビニ弁当の空箱が入っていた。
(また、コンビニのお弁当…。外食ばっかりしてるんだろうな。
大変な仕事なんだから、ちゃんと栄養のあるもの食べるようにっていつも言ってるのに。)
紅茶には異常なくらいに執着しているくせに、食には全く興味のないリヴァイの食生活は、恋人だった頃から心配の種だった。