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【進撃の巨人】Short Story

第6章 相変わらず【リヴァイ】


部屋の前で、私はまた立ち止まる。
合鍵を返さなきゃいけなくなった私はもう、この扉を好き勝手に開くことは出来ない。

(来なきゃよかったな。)

今さら後悔しながら、勇気を出してドアチャイムを押した。
あまり待たずに、扉が開く。
数週間ぶりに会ったリヴァイは、横の髪が跳ねて寝癖になっていた。
不機嫌そうに聞こえた低い声は、寝起きだったせいかもしれない。
それに、少し痩せたみたいだ。
疲れた顔をしてる。

「入れ。」

チラリと私を見るだけして、リヴァイは部屋の中へと入って行く。
閉じそうになる扉を手で押さえて、私も急いで玄関に足を入れる。
その途端に、ふわりと香る紅茶と石鹸が混ざったような匂い。
大好きだったリヴァイの匂いだ。
鼻の奥を刺激するそれに、ツンとして目頭に力が入った。
靴を脱いでからリビングへ向かうと、リヴァイが大きめの黒いトートバッグを持って立っていた。

「残ってたもんは大体入れた、はずだ。
 後は自分で探せ。」

リヴァイはそう言って、黒いトートバッグを私に渡す。
礼を言ってから中を覗くと、そこには、私とリヴァイの想い出が無造作に詰め込まれていた。
私が買って2人でハマったゲームソフトや漫画、ガラステーブルにつけてしまってめちゃくちゃ怒られたサーモンピンクのマニキュア、買ったのはいいものの使い道が分からずに放っておかれた変なキャラのキーホルダー。
それからー。

(あ、これ。何処にあったんだろう。)

上巻と下巻をセットで買ったはずなのに、上巻を読み終わる頃には何処に行ったのか分からなくなっていた下巻もあった。
中途半端なところで終わってしまっていた恋愛の続きを、漸く読める。
やっと、完結出来る。
その他にも、何に使うんだよとリヴァイにいつも呆れられていたガラクタにしか見えない雑貨も幾つかあったけれど、想い出を数えるのをやめて、私はリビングを見渡した。
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