第5章 不真面目な上司と部下【リヴァイ】
「リヴァイ兵長の寝顔なんて初めて見たな~。
寝てても不愛想で笑える。」
クスッと笑って、綺麗に筋の通った小さな鼻を指でつつくと、リヴァイ兵長の眉間に皴が寄った。
聞こえたのか、睡眠を邪魔されたと思ったのか。
まぁ、少し睡眠の邪魔をするくらい許してもらってもいいはずだ。
私はここ何年もずっと、リヴァイ兵長に尽くし続けてきたのだから。
だから、今なら、日頃の恨みつらみを言ってもいいんじゃないだろうか。
どうせ、眠ってるリヴァイ兵長には聞こえていないのだし。
寝顔がよく見えるように、私は、ソファの前に膝を曲げて腰を降ろした。
すぐ目の前になった不愛想な寝顔に、私は言いたい言葉を考える。
「ばーか、ばーか。紅茶ばーか。人類最強ばーか。」
最初に思いついたのが小さな子供の悪口で、我ながら悲しくなった。
眉間の皴がなくなったものの、リヴァイ兵長は相変わらず不愛想な寝顔だから、怒られているような気分になる。
でも、せっかく寝てるのだ。
今しかチャンスはない。
言いたい文句を、全部言っちゃえー。
「書類の山作るのやめろ~。大切な書類に限って引き出しに隠す嫌がらせやめろ~。
毎回毎回徹夜させられるこっちの身にもなりやがれ~。仕事しろ~、仕事を~。
少しは部下の身体を労わりやがれ~。」
呪文のように言ってみた。
リヴァイ兵長は相変わらず不愛想な寝顔で、全く起きる気配がない。
本当に疲れていたのだろう。熟睡だ。
「寝ちゃうほど疲れてるなら、ちゃんと夜寝ろ~。フラフラ真夜中に談話室で紅茶を飲むな~。
食事もちゃんととれ~。倒れても知らないぞ~。
リヴァイさんが倒れたら、すごく心配しちゃうだろうが~。」
なんか憎たらしくなってきて、鼻をつまんでみた。
ありえないくらいに眉間に深い皴が刻まれたから、すぐに指を離した。
起こしてしまったら最悪だ。
怒られてしまう。
怒られて、しまうよー。
こんな、気持ちー。
「意地悪で、仕事を私に押しつけてばっかりのくせに、辛いときにさりげなくそばにいるとか
カッコいいことするな~。好きになっちゃっただろうが~。
同じ部屋で一緒に徹夜とか拷問かよ、いつもドキドキしてむしろ目が冴えて仕事が捗っちゃうんだよ、ばーか。」
本人が起きていたら絶対に言えない文句を言って、無防備な唇に一瞬触れるだけのキスをした。