第5章 不真面目な上司と部下【リヴァイ】
リヴァイ兵長の食事を乗せたトレイを持って、私は今度こそ執務室へ向かう。
デスクの上の書類の山は相変わらず高いままだし、私が今集めて来たリヴァイ班の壁外調査報告書も確認してもらわないといけない。
さすがに、昨日徹夜する羽目になったことを反省して、今日くらいは真面目に執務室で書類仕事をしてくれていると信じている。
だから、紅茶はいつもよりもいいものを出してやろう。
そんなことを思いながら、漸くリヴァイ兵長の執務室に辿り着いたときには、団長の元へ書類を届けてから3時間以上が経っていた。
最初は手こずっていたけれど、今ではもう、トレイを片手で持って、扉を開くのもお手の物だ。
「書類の提出終わりました。
リヴァイ兵長は今朝、私がお願いしたノルマは終わりましたか?」
とりあえず、最後まで言ってはみたけれど、ソファの上で横になっている不愛想な寝顔が返事しないだろうことはすぐに分かった。
(クソ野郎。)
私が忙しく働いているときに、クソ忙しくさせた張本人が昼寝とはいい度胸だ。
分かる。
眠たいのは分かるのだ。
1週間前に壁外調査から帰って来たばかりで調査兵達はバタバタしていたし、昨日は徹夜だった。
そりゃ疲れているだろう。
私もだけどなー!
ため息を呑み込んで、持ってきたトレイをローテーブルの上に乗せてハンカチをかけた。
ローテーブルの上には、今朝、私がノルマとして渡した書類が開いてあった。
ところどころにリヴァイ兵長の几帳面で小さな字が並んでいて、珍しく努力を感じなくもない。
「寝るならせめてブランケットくらいかけてください。」
ベッドからブランケットを引っ張って持って来て、リヴァイ兵長の肩にかけた。
人類最強の兵士として調査兵団の兵士達をエルヴィン団長と共に牽引しているのだから、重責を背負って疲れているに決まっている。
そこで、徹夜なんてさせられてしまえば、珍しく昼寝をしてしまうのも仕方がない。
それくらい、許してやってもいい。
兵長に心も身体も休ませる。それも、兵長補佐の大事な仕事だと思ってる。