第5章 不真面目な上司と部下【リヴァイ】
受け取った報告書を簡単に見て、記入漏れがないことを確認する。
問題なさそうなので、受け取って他の書類とまとめた。
「さん、大丈夫ですか?隈が出来てますよ。
また徹夜で書類作成ですか?」
エルドが心配そうに私の顔を覗き込む。
自覚もあった私は、目の下を擦った。
こんなことで隈が消えるわけがないどころか、薄い皮膚への強い摩擦で逆効果だってことも分かってる。
疲れて頭がまわらないだけだ。
「ううん、昨日は書類のチェック。今日までに憲兵団に提出しなきゃいけない書類を
リヴァイさんが真っ白のまま綺麗に引き出しに仕舞ってるのを、
昨日のお昼過ぎに見つけて、それからリヴァイさんの執務室で徹夜。」
「またですか…。せめてデスクの上に置くように言ってもダメなんですか?」
「デスクの上に何か乗ってるのがいやなんだって。
馬鹿みたいな書類の山をデスクの上に作っておいてどの口が言ってんだって思うんだけど。
大切な書類に限って引き出しに仕舞う癖、治してくれないかな。嫌がらせとしか思えない。」
「なんていうか…、ご愁傷さまです。」
哀れみを帯びた視線で見送られて、私はエルドの部屋を後にする。
執務仕事が苦手なリヴァイ兵長が、兵長になってすぐに私は兵長補佐に任命された。
理由は簡単で、私が速記や執務仕事が得意だったことと、そこそこの精鋭で、書類仕事をやり残したまますぐには死なないだろうと判断されてしまったからだ。
そのせいで私は、ここ数年、厳しい特訓に加えて、大量の事務仕事に目がまわりそうな日々を過ごしている。
胸ポケットから懐中時計を出して時間を確認すると、もう昼を過ぎていた。
リヴァイさんは食事に対してだらしがないところがある。
言わないと食べないし、言っても食べない。
きっと今も、朝まで徹夜したというのに朝に少しだけパンを齧ったきりで何も口にしていないのだろう。
(仕方ないか。これも仕事だ…。)
目の前に誰もいないのに、わざとこれ見よがしにため息を吐いて、食堂に食事を貰いに行くことを決めた。
宿舎横にある食堂に入ると、調査兵達が賑やかに食事を楽しんでいた。
「やぁ、。今日もリヴァイの昼飯を貰いに来たのかい?」
ナナバにからかわれたけれど、反応する力はもう残っていない。
情けない笑みを返せば、また心底哀れそうな目を向けられた。