第8章 scene2:ハートのバスタブ
「ね、僕のメイクボックスは?」
特に何をするでもなく、国分監督さんと楽しそうにお喋りしている長瀬さんに駆け寄り、声をかける。
長瀬さんと国分監督さんは、高校の先輩後輩らしく、とっても仲良しなんだって(笑)
あ、因みに…なんだけど、国分監督さんの方がちょびっとだけ先輩なんだって…
だからかな…
通常強面の長瀬さんも、今日は何だかちょっとだけ大人しく見えちゃう(笑)
…って、そんなことはどうでも良くて…
「ね、どこどこ?」
「ああ、それならそこにあんだろ?」
無精髭を蓄えた顎で、部屋の片隅に積まれた荷物の山をヒョイと指して、長瀬さんはまた国分監督さんとのお喋りを始める。
もぉ…、お喋りばっかしてないで、ちゃんとお仕事したら良いのに…
僕は溜息を一つ落とすと、沢山の荷物の下敷きになったメイクボックスを救出すべく、上に乗った荷物を一つ一つ退かして行った。
NINOが待ってる…と思って、必死でね?
なのに…
「お? おお? もしかしてHIMEちゃん…」
国分監督さんがピュ〜と口笛を吹きながら、僕の太腿をペロンと撫でた。
「キャッ…」
「パンティ履いてないんだ?」
え…?
「あ…」
そう言えば、ブラは着けた記憶があるけど、パンティを履いた記憶がない。
「お尻もおちんちんも丸見えだよ?」
「や、やん…、見ないでぇ…」
僕は慌ててスカートの裾でお尻とお股を隠すと、漸く救出したメイクボックスを手に、バスルームに駆け込んだ。
あー、びっくりした…
「もぉ…、本当にエッチなんだから…」
また“元気印”がひょっこりしちゃったら、大変のは国分監督さんなのにね?
男の人って、困った生き物ね?