第8章 scene2:ハートのバスタブ
「くく、HIMEちゃんて、スイーツが大好きなのね?」
「うん、HIMEスイーツ大好き♡」
僕は泡々の中に腰まで身体を沈めると、両手で掬った泡にフーっと息を吹きかけた。
こんもりと塊だった泡が、小さな泡になって舞い上がる。
「ふふ、フワフワの綿雪みたい♪」
ね、そう思わない?
NINOを振り返ると、NINOがお腹を抱えてクスクス笑っていて…
あれ?
僕、何か変なこと言った?
僕が頭の上に?マークを浮かべ、首を傾げると、まるでその時を狙っていたかの様に、カメラのレンズが僕に向けられた。
「ほら、HIMEちゃん笑って笑って」
「へ? こ、こう…?」
戸惑いながらも、カメラマンさんの要求に応えて、僕はカメラに笑顔を向けた。
どびっきり可愛い笑顔をね?
「いいね〜、HIMEちゃん可愛いよ、すっごく可愛い」
そ、そう?
僕…、可愛い?
ふふふ、嬉しいな♪
「あ、そうだ、どうせだからNINOちゃんも一緒に…、どうです、監督?」
「それはナイスなアイディアだね」
カメラマンさんの思いつきに、国分監督がノリノリで泡を手に掬う。
ってゆーか、監督さん…
早く前閉めたら良いのに(笑)
“元気印”…丸見えだよ?
「さ、ささ、NINOちゃん、お顔をこっちに向けてごらん?」
「え、わ、私は良いわよ…。だって私、HIMEちゃんみたく可愛くないもの…」
「そんなことないよ、NINOちゃんはとっても美人さんだよ? だから、ね?」
国分監督が手に掬った泡を、今度は指でちょっと掬う。
そしてNINOの鼻先にちょこんと乗せた。
「何だか恥ずかしいわ…」
NINOの頬が、ピンク色のタイルよりも、もっと濃いピンクに染まった。
ふふ、照れたNINOって、とっても可愛い♡