第35章 scene37:僕達のParty Starters!
ちょっと…だけ、腰が砕けそうになった。
翔くんは腰をグリグリ押し付けて来るし、お口の中だって満遍なく舐められてさ、凄く気持ち良かったんだもん。
このままベッドに直行したくなるくらいにね。
息子くんもね、ちょっぴり元気になっちゃった…よ?
ってゆーか、こんなことしてる場合じゃない!
「ね、翔くん時間は? 大丈夫なの?」
翔くんのことだから、大分余裕を持って時間設定してるだろうけど、途中で迷子になったりとかさ…なっちゃったら、間に合わなくなっちゃうことだってあるじゃん?
いくら入社式とは言え、記念すべき“初出勤”だもん、遅刻はダメだよ。
「うーん…、大丈夫じゃないかも…」
「え、嘘…。ね、早く行って?」
「嘘、冗談だよ(笑)」
へ、どゆ…こと?
「時間は、余り過ぎるくらい余裕あるから、心配しなくて大丈夫。でも、そんなことより大事なこと忘れてたからさ…」
「大事な…こと?」
首を傾げた僕に、翔くんがクスリと笑って、また額にキスをする。
「あ、もしかして…、行って来ますのキス…とか?」
「うん。あ、勿論“逆”でも良いんだけどさ、子供の頃さ、親父とお袋が出かけに良くしてたんだよね、キス」
そう…なんだ?
「前の晩に凄い喧嘩しててもさ、出かける時だけは、ちゃんとキスして、それから手を振ってさ…」
なんだか、あの二人が…って思うと、意外なんだけど(笑)
「なんつーか…、別に憧れってわけではないんだけどさ、そういうの良いなって思っててさ…。だから、俺も…っつーか、俺達も…」
「しよ?」
僕は翔くんの言葉を遮るように、翔くんの唇に人差し指を押し当てた。
「もし…さ、“もう終わり!”って思うくらいの、酷い喧嘩したとしても、出かける時は“行ってらっしゃい”のキスしよ?」
「智…?」
「そしたらさ、リセット出来そうな気がしない?」
勿論、そんな簡単なことで…って思わなくもないけどさ、キスってそれくらいのパワーがあると思うんだ。