第35章 scene37:僕達のParty Starters!
「行ってらっしゃい」
僕が手を振ると、笑顔で「行ってきます」と返してくれる翔くん。
どうにもならないことだって分かってるけど、離れたくない。
だからかな…、つい引き止めたくなる衝動に駆られるけど、ダメダメ。
今引き止めちゃったら、何のために下まで見送りに行きたい気持ちを我慢したのか分かんなくなっちゃう。
僕は翔くんが玄関のドアを閉めるまで、ずっと手を振り続けた。
そして、玄関のドアがパタンと閉まった瞬間、急に寂しくなっちゃって…
今までだってあったよ?
学校とかなんかで、翔くんと会えない時間なんて、いくらでもあったし、一人で過ごす夜だって少なくはなかった。
だからてっきり慣れてると思ってたのに、翔くんが社会人ってなだた途端に、凄く遠い存在になっちゃった気がしたんだ。
こんなことじゃダメなのにね?
「よーし、今日はお天気も良いし、お洗濯いっぱいしちゃおうかな♪」
僕は鼻をスンと啜ると、誰が見ているわけでもないのに、ガッツポーズをした。
でもその時、フワッと冷たい風が吹き込んで来たかと思うと、
「ごめん、忘れ物…」
息を切らした翔くんが玄関に立っていて…
「え、何? 僕取って来ようか?」
革靴って、案外脱いだり履いたりすんの面倒だし…
「ううん、良い」
へ?
「ちょっとこっち来て?」
え、でも忘れ物は?
僕は首を傾げながらも、途中まで進んだ廊下を、翔くんの立っている場所まで引き返した。
すると…
「え…?」
不意に翔くんの手が伸びて来たかと思うと、僕の身体は一瞬のうちに翔くんの腕の中にあって…
「あ、あの、忘れ物…は?」
僕が聞くと、翔くんはクスリと笑って僕の額にキスをして、それから頬にもキスをして、それからそれから…僕の唇にもキスをした。
「ん…、んふっ…」
しかも、すっごーく濃厚なキスを…