第35章 scene37:僕達のParty Starters!
「貸して?」
ネクタイの端っこを握ったままの僕に、翔くんが笑いを堪えながら言う。
そして、不器用だと思っていた翔くんの手が、とっても滑らかで流れるような仕草でネクタイを結んでいく。
「凄いね、翔くん」
「まあ、これくらいはね。一応、社会人ですから(笑)」
そっか、社会人なら出来て当然…、なんだよね。
なのに僕ってば、ネクタイ一つ結べないなんて…
「ねぇ、今度教えて?」
そしたら、毎日でも翔くんのネクタイ結んであげられるもん。
なのにさ、翔くんたらさ…
「智に任せておいたら、毎日遅刻になりそうだね」
なんて笑うんだもん、失礼しちゃうよね?
だいたい、手先は僕の方が断然器用なんだから、コツさえ掴んでしまえば、絶対僕の方が綺麗に結べる自信あるんだけどな…
だって翔くんの手先の不器用さときたら、壊滅的なんだもん(笑)
まあでも、ネクタイを結ぶ翔くんの仕草、超が付くくらい格好良いから、それ見てるのも悪くないかも♪
「あ、ねぇ、歪んでる」
「そう? じゃあ…、直してくれる?」
「うん♪」
そう、たまにこんな風に歪んでるのを直して上げたりしてさ(笑)
「どう、似合う?」
ジャケットを羽織り、キッチリボタンを留めた翔くんが、僕を振り返るから、僕は思わずドキッとしてしまう。
いつもの翔くんよりも、数倍…ううん、数十倍大人びて見えるんだもん。
「やっぱさ、着慣れてないから変…かな?」
「ううん、そんなことない。とっても似合ってる」
赤と青のチェック柄なんて、ちょっぴり派手かと思ったけど、全然そんなことない。
寧ろ、翔くんがイケメン過ぎて、ネクタイが霞んじゃうくらいだよ。
あ、でも(笑)
僕は翔くんの頭に手を伸ばすと、ピョコンと跳ねた髪を手で撫で付けた。
「ふふ、寝癖なんかつけてたら、せっかくのイケメンが台無しだよ?(笑)」
ま、それが翔くんらしいちゃ、らしいんだけども(笑)