第35章 scene37:僕達のParty Starters!
吊り戸棚の奥に隠してあった“例のアレ”を取り出し、背中に隠して腕時計をはめる翔くんの前に立つ。
う〜ん、翔くんの腕時計をはめる仕草、僕好きなんだよね♪
だって凄くセクシーなんだもん♡
…って、うっとりしてる場合じゃない!
「あの…、翔…くん?」
「ん、どうした?」
あー、そうそう、このちょっぴり眉毛を下げて笑うお顔も好きなんだよね♪
…って、だからそうじゃなくて!
「あの…ね、これ…」
僕は背中に隠した赤い包を、シャツのボタンを全て留め終えた翔くんの前に差し出した。
「これ…は?」
「んと…、就職祝い…かな…」
「うっそ、マジで? 俺にくれんの?」
僕が差し出した赤い包みを手に取り、下がっていた眉毛を更に下げて微笑む翔くん。
喜んでくれてる…んだよね?
「開けて良い?」
「…うん」
もし気に入って貰えなかったらどうしよう、なんてことも考えてしまうけど、それでも僕は翔くんにプレゼントしたかったんだ。
翔くんの人生の節目になる日に、どうしても着けて欲しくて…
勿論、プレゼントにネクタイを選んだのは、それだけの理由じゃないけどね?
包装紙を捲り、箱の蓋をゆっくりと開く翔くん。
う〜、ドキドキする…
「どう…なか…?」
箱を手にしたまま、ぴくりとも動かない翔くん。
え、やっぱり気に入らなかった?
「あ、あの、もし気に入らなかったら、僕他のと取り替えて貰って来るから…」
確かレシートは財布の中にまだあった筈だし、それに買ってから日も経ってないから、多分大丈夫…だよね?
僕は固まってしまった翔くんの手から、ネクタイの入った箱を取り上げようと手を伸ばした。
でも、
「いいから…」
僕の手を翔くんが掴んだ。
「で、でも…」
気に入らない物を着けるよりも、やっぱり翔くんが気に入った物を着けて貰った方が、僕は嬉しいから…