第35章 scene37:僕達のParty Starters!
どうってことない、ごくごくありふれた朝ご飯なのに、翔くんは凄く喜んでくれて♪
ご飯もお味噌汁も、何回もおかわりしよとするから、三回目までは許したけど、それ以上は止めた。
翔くんは”何で?”ってお顔をしたけどさ、それ以上お腹大きくなっちゃったら、いくら余裕があるって言っても、ベルト閉まんなくなっちゃうもん。
「今日はお家に帰るんでしょ? また今度お泊まりの時に作るから。ね?」
空になったお茶碗を片付けながら言うと、
「やっぱさ、今日はこっちに帰って来ちゃダメかな?」
翔くんは唇を尖らせて、急に拗ねた素振りをする。
「ダメだよ…。今日はちゃんとお家に帰って?」
本音を言えば、僕だってそうしてくれたら嬉しいけどさ、今日はお家で就職のお祝いするって翔くんのお母さん言ってたし、これまでまでみたいに頻繁にお泊まりとかは難しくなるだろうから、“次”がいつになるかなんて分かんないけどさ、翔くんにとって大切な日だからこそ、ちゃんとお家に帰って欲しいな…って思っちゃったんだよね…
僕のことを一番大事に思ってくれるのは嬉しいけど、僕を大事に思うのと同じくらい、翔くんには家族のことも大事にしてもらいたいんだもん。
「分かったよ…。あーあ…、早く一緒に暮らしてー」
僕も同じだよ。
早く翔くんと一緒に暮らしたい。
でもまだ僕達は、やっと今日その一歩を踏み出したばかりだもん。
寂しいけど、我慢しなきゃだよね?
「あ、翔くん、時間大丈夫?」
ふと時計に視線を向けた僕は、思ったよりも時間が経っていたことに慌てた。
「あ、やっべ…、いい加減着替えねぇと…」
入社式が行われるホテルは、翔くんのお家からだと、僕のマンションと比べると、駅にしたら三つばかり遠い。
時間も距離も、そう大した差があるわけじゃないけど、だからと言ってのんびりしてるだけの余裕はない。
僕は壁にかけられた翔くんのスーツと、シャツを一纏めにして翔くんに手渡すと、そそくさと着替えを始めた翔くんをその場に残し、キッチンへと入った。