第34章 scene6:HIMEは君の中にずーっといるよ♡
「どこ…行くの?」
突然腕から擦り抜けた僕を、翔くんが引き止める。
「えと…、コンビニ…に…」
「コンビニって…? あ、何か飲み物でも?」
「う、うん…、そんなとこ…かな…」
流石に“お金下ろして来ます”とは言えなくて、咄嗟に誤魔化してはみたけど、僕は翔くんが思った以上に心配性なのをすっかり忘れていた。
「じゃあ一緒に行くよ」って、僕に着いて来ようとするんだもん。
一応さ、一人で大丈夫って言ってはみたけど、そんなんで翔くんが納得する筈もなく…
「ダメだよ、暗くなってきたし、何かあったらいけないから…」
…ってさ、意地でも着いて来ようとするから、もうどうすることも出来なくて…
「あのね、実はね…」
僕はコンビニに行くことを諦めて、コンビニに行く本当の理由を伝えることにした。
「翔くんが欲しい物が何かは分かんないけど、僕今持ち合わせが全然なくて…。だからコンビニのATMで下ろして来ようかと思って…」
クレジットカードとかも持ってないし…
「だ、だから、ちょっと待ってて? すぐ戻って来るから、ね?」
僕は両手を擦り合わせながら、上目遣いで翔くんを見上げた。
そしたらさ、翔くんがいきなりプッと吹き出したかと思うと、お腹を抱えて笑い出すから、僕もビックリしちゃって…
ってゆーか僕、そんな大笑いさせるような、おかしなこと言った?
「そっか…、わざわざお金下ろして来てくれるんだったら、もっと高価な物にしておけば良かったな(笑)」
へ?
どゆ…こと?
「あのさ、俺が欲しいのは…」
言いながら、翔くんが僕を正面から抱き寄せ、驚いて上向いた僕の顎に指をかけた。
「翔…くん?」
「俺が欲しいのは、智くんが想像してるような高価な物じゃなくて、智くんからのキスが欲しいな…って…思ってさ…」
「僕からの…キス?」
僕が首を傾げると、翔くんはコクリと頷いてから、顎にかかっていた指を外し、身体と身体が隙間なくくっついてしまうような、強い力で僕を抱きしめた。