第34章 scene6:HIMEは君の中にずーっといるよ♡
「すげぇ、何ここ、超綺麗じゃん」
僕達の目の前に広がっているのは、丁度茜色に染まった空を背にしたタワーで…
太陽の濃いオレンジと、逆光に浮かび上がるタワーの黒のコントラストがとても綺麗だ。
「ふふ、でしょ? 僕ね、ここから見える景色が前から好きなんだ」
「へえ、そうなんだ…?」
生まれ育った街を離れて、知り合いなんて誰一人いないこの街に来て、でも最初は凄く寂しくて…
その度にここに来て、沈んで行くの太陽を見つめては、一人泣いていた場所。
いつか、心から僕のことを想ってくれる人が現れたら、その時はその人と一緒に来ようと思っていた、僕にとってとても大切な場所。
その大切な場所で、眩しい太陽の光にも負けないくらいに、目をキラキラと輝かせる翔くん。
「こんな場所あったんだね? 俺、全然知らなかったよ」
「気に入ってくれた?」
「うん、凄く…」
そう言って、横顔でも分かるくらいにお顔を綻ばせる翔くん。
夕日に照らされた髪がオレンジに染まっていて、凄く綺麗で…
思わず見とれていると、それまでしっかり繋いでいた手を解き、翔くんが僕の肩を抱き寄せた。
だから僕も翔くんの腰に腕を回し、ちょっぴり頼りなく撫でた肩にコツンと頭を載せた。
「ごめんね、今度ちゃんとプレゼント用意しとくから…」
「何もいらないよ…。智くんの思い出…なのかな、大切な場所に、智くんと一緒に来れただけで十分だよ」
「でも…」
したいんだ…、社会人一年生になる翔くんのために、素敵なプレゼントを…
「じゃあ…さ、一つだけ…良い?」
「え…?」
ってゆーか、今?
え、ちょっと待って?
僕今いくら持ってたっけ?
確か…、先週下ろしたきりだから、多分千円札が何枚かあるだけだったような…
あ、でも…
「あ、あのさ、今僕持ち合わせなくて…、だからちょっと待っててくれる?」
コンビニ行けばなんとかなる…かも?