第34章 scene6:HIMEは君の中にずーっといるよ♡
そっか…
考えてみれば、翔くんと付き合い始めて、何度も何度も…数えきれないくらいキスをしてきたけど、僕はいつもお強請りするばっかで、僕からしたことって…、そんなに多くはないかも。
え、でもそんなことで良いの?
だって、翔くんの内定が決まったことへのプレゼントなのに?
「あ、あのさ、他に欲しい物とかないの? ちょっとくらい高くても、僕平気だから…」
僕が、初めて心から“恋人”って呼べる人なんだもん、奮発するのは当然じゃん?
なのに翔くんたら…
「いらない。俺は、智くんがキスしてくれたら、それで良い」
「そう…なの?」
「あ、でもさ、一つだけ…良いかな?」
ほら、やっぱりあるんじゃん♪
「うん、なになに?」
「智くんの部屋の合鍵が欲しいな、って…」
へ?
合鍵…ですか?
「勿論、嫌なら良いんだけどさ、ダメ…かな?」
「う、ううん、全然ダメじゃないけど…」
キスの次は合鍵って…
あ!
もしかして翔くん、僕のこととんでもなく貧乏人だと思ってるとか?
確かに今の僕は無職だし、AVに出てたからって、AV業界に印税なんてもんは存在ないから、入って来るお金なんてゼロだけど、これまで貰ったギャラもまだ残ってるし…
そんなに貧乏でもないんだけど?
でも…、翔くんが欲しい物をプレゼントするのが一番だよね?
「分かった。今度会う時までに合鍵造っとくね?」
「マジで? 超嬉しいんだけど♪」
え、たかだか合鍵一つなのに、そんなに喜ぶ?(笑)
まあ…、もし僕が逆の立場でも、同じように喜ぶんだろうな…
だって、恋人のお部屋の合鍵持ってるって、なんか凄くエロくない?
…って、僕だけか(笑)
「あ、でもその前に…」
翔くんが僕の腰を引き寄せ、目を瞑って唇を突き出す。
ふふ、もぉ翔くんたら…
可愛いんだから♡
僕はちょっとだけ背伸びをすると、ムゥ〜ッと突き出した翔くんの唇に、チュッと…本当に触れるだけのキスをした。