第34章 scene6:HIMEは君の中にずーっといるよ♡
「あのさ、俺全然気にしないよ? そりゃさ、HIMEちゃんとデート出来るなら、それはそれで嬉しいけど、俺がデートしたいと思ってるのは、HIMEちゃんじゃなくて、智くんだから…」
うん、それは僕も同じ。
僕だって、HIMEの姿で翔くんとデートがしたいわけじゃないもん。
ありのままの“僕”でいたいもん。
でも…、でもさ…
「恥ずかしくない?」
「何が?」
「だって僕男の子だよ? 男の子と手とか繋いであるくの、翔くん恥ずかしくないの?」
それにもし誰かに見られでもしたら…
それが会社の人とかだったら…
「内定取り消しになっちゃうかもしれないじゃん…」
僕のせいでそんなことになったりしたら、僕もう翔くんの傍にいられなくなっちゃうよ…
「馬鹿だね、智くんは…。俺は恥ずかしいとか思ったりしないし、それにちゃんとカミングアウトしてきたから…、俺の恋人は男です、って」
へ?
今、カミングアウトって言った?
「え、ちょっと待って? カミングアウトって…、どうして…」
だって翔くんは僕と違って、本当は普通に女の子が好きなノンケな人なわけだし、カミングアウトなんてする必要ないんじゃ…
「何でかな…、俺なりのケジメみたいな感じなのかな…」
「ケジメ…?」
「俺自身、何に対してのケジメかは分かんないだけどさ、なんつーか…、中途半端なの嫌だったんだよね」
分かるよ?
何でも白黒つけたがらる翔くんの性格だもん、自分の気持ちが中途半端なままなのは嫌だったんだよね?
でもさ、それにしたってだよ…
「会社の人、何て…?」
「ん? ああ、カミングアウトした時?」
「うん…」
ってゆーか、それ以外にある?
「まあ…、面接官の人達それなりに驚いてはいたかな…」
そりゃそうだよ…
この先の人生を左右する大事な時に、カミングアウトなんて…
しかも恋人は男の子です、なんてさ…
普通は言わないでしょ?