第34章 scene6:HIMEは君の中にずーっといるよ♡
数日後…
いつものように僕のマンションに来た翔くんは、どうにも落ち着かない様子で…
でもそれは僕も同じで…
「ねぇ、座ったら?」
僕が言うと、一瞬はソファーに腰を下ろすけど、すぐにまた立ち上がってお部屋の中をウロウロとして…
「ね、コーヒー入れ直そうか?」
すっかり冷めてしまったコーヒーを入れ直そうと僕が腰を上げかけたら、
「いや、いいよこれで」
翔くんは漸く腰を落ち着けてコーヒーを一気に飲み干した。
「どう? ちょっとは落ち着いた?」
色違いで揃えた赤いマグをテーブルに置き、フーッと息を吐き出した翔くんのお顔を覗き込むけど…、そう簡単にはいかないよね?
「あー、無理! 超緊張する」
翔くんは両手で髪をクシャッと掻き混ぜてから、両腕をしっかり組んで、テーブルの上にポツンと置かれたスマホをジッと見つめた。
「時間通りにくるんだ…よね?」
「うん、そう聞いてる」
「そうなんだ? じゃあ…、もうすぐだね…」
「うん…」
翔くんが頷いたその時…
テーブルの上にポツンと置かれた翔くんのスマホが、それはもうけたたましい音を立てて暴れた。
「来た…の?」
「うん、そうみたい…」
翔くんがゆっくりスマホに手を伸ばす。
指先が震えてるように見えるのは、僕の気のせいなんかじゃない。
そうだよね…
僕がこんなに緊張してるんだもん、当の本人である翔くんが緊張しないわけないもんね?
スマホを手に取った翔くんが、一瞬僕の方を見て、「開けるよ?」と真剣なお顔で言う。
僕はそれに頷きだけで返すと、ゴクリと息を呑んだ。
そして、それをきっかけに翔くんの指が液晶画面の上を滑り…
「どう…だったの?」
僕が聞くと、翔くんがやっぱり真剣なお顔を僕に向け、ガクーンとばかりに項垂れた。
もしかして…、ダメだった…とか?