第34章 scene6:HIMEは君の中にずーっといるよ♡
「ま、その前に早く内定貰わないとな…」
翔くんがベッドに大の字になって僕の腕を引っ張るから、自然と僕は翔くん腕に包まれる格好になる。
「就活って大変なんだね?」
高卒で、ろくに就職もしないままフリーター生活を続ける僕には、翔くんがしている苦労がいまいち良く分からない。
でも、履歴書を何度も書き直してる姿や、慣れないスーツに身を包んで、買ったばかりの靴の底を擦り減らしてるのも見てるから、少しは分かるつもり。
だから「行ってきます」のメールを貰う度、心の中でずっと応援してた。
頑張って、って…
「うーん…、大変と言えば大変なんだろうけど、目標っつーか…、目的が出来たから、全然苦じゃないし、寧ろ楽しいかな(笑)」
そう…なんだ?
苦労も楽しめちゃう翔くんの気持ちは…、僕には理解出来ないけど、でも凄く翔くんらしいかも(笑)
「ねぇ、目的って…、さっき言ってたこと?」
僕と一緒に暮らしたいって…
「うん、それも勿論あるけど、俺もう一つ夢っつーか、あってさ…」
「え、なになに? どんな夢? 教えて?」
翔くんのシャツをキュッと掴んで見上げた僕を、翔くんが思いっきり細めた目で見下ろす。
そして僕の鼻を指で摘むと、「まだ内緒」って言ってクスリと笑った。
そっか…、夢か…
今まであんまり考えたことなかったけど、僕の夢って何だろう…?
特にしたいこともないし、僕に出来ることって言ったら…、きっと翔くんに比べたら凄く少ないし…
う〜ん…
やっぱり良く分かんないや…
でも一つ言えるのは、ずっと今の幸せが続けば良いな…って、それだけかな…
ってゆーか、僕も頑張らないとだよね?
今はまだAVに出てた時のギャラがあるから何とかなってるけど、それだっていつまでも続くわけじゃないもん。
就職…は無理かもだけど、バイトくらいは探さないとね?
だって翔くんが頑張ってるんだもん。
僕だって頑張らなきゃじゃん?