第34章 scene6:HIMEは君の中にずーっといるよ♡
カシャカシャッと、何度かシャッター音が鳴って、翔くんに肩を抱かれた僕がスマホカメラに収められて行く。
でも何度シャッター音が鳴ってと、やっぱり僕のお顔は引き攣ったままで…
「笑って?」って翔くんに言われるけど、自分で自分のお顔を撮るのって、恥ずかしいんだもん。
HIMEの時は全然平気だったし、寧ろ撮って欲しくてたまんなかったのに…
あ、そっか…
「ちょっと待っててくれる?」
「え、あ、うん…、良いけど…」
僕は翔くんから離れると、窓際に置かれた翔くんの勉強机の前に座った。
勉強机の上には、そんなに大きくはないけど鏡があって、僕は鏡を手に取ると、静かに瞼を閉じた。
僕はHIME…
メイクも、可愛い服も着てないけど、そんなの必要ない。
だって僕はHIMEなんだもん…
ね、そうでしょ?
僕は自分で自分に魔法をかけた。
本当はね、半信半疑…ってゆーか、無理かなって思ったんだけど、全然そんなことなくて(笑)
パッと目を開いて、まるで何事もなかったみたいに翔くんの隣に座った僕は、再び翔くんの腕の中にスッポリと身体を埋めた。
「お写真、撮ろ?」
「あ、う、うん…」
え、何…、どうしたの?
今度は翔くんの方が照れてる?
「じゃ、じゃあ…、撮るよ?」
「うん♪」
頷いて、とびきりの笑顔をスマホに向ける僕。
するとカシャカシャッとまたシャッター音が鳴って…
僕と翔くんの笑顔が、僕のスマホカメラに収められた。
「ね、見せて?」
ってゆーか、僕のスマホなんだけどね?(笑)
「うん、ちょっと待ってね? 俺のスマホにも送るから」
「うん♪」
翔くんが僕のスマホを操作して、自分のスマホに撮ったばかりの写真を送信して行く。
その中には、僕の引き攣った笑顔の写真まで含まれていて…
「ねぇ、何で?」
僕が聞くと、翔くんはちょっぴり肩を竦めて、
「とんな智くんも残しておきたいからさ」
嬉しそうに笑った。