第34章 scene6:HIMEは君の中にずーっといるよ♡
…って思ってたんだけど、それはどうやら違ったらしく…
翔くんのお父さんは新聞をパタンと畳んで、テーブルのの上に置くと、コホンと一つ咳払いをしてから、僕をチラッと見て、お顔を赤くした。
…って、え?
「ま、まあ…、君のことは翔の従兄弟でもある潤から聞いてるから、今更説明を聞く必要もないんだが…」
松本さんから?
え、僕松本さんからは何も聞いてないけど?
僕は首を傾げつつ、翔くんのお顔をチラッと見ると、翔くんも僕と同じように首を傾げていて…
僕の視線に気付いたのか、僕をチラッと見て首を横に振った。
うーん…、なんだか嫌な予感がする。
だって翔くんのお父さんのお顔…、ありえないくらい赤くなってるんだもん。
まさかとは思うけどさ…、違う…よね?
僕はちょっぴり不安に思いながら、ずっと抱えていたケーキの箱をテーブルの上に置いた。
「あ、あの、これつまらない物です」って…
そしたらさ、翔くんのお父さんが突然お腹を抱えて笑い出して…
え、僕、何か変なこと言った?
「智くん、それを言うなら“つまらない物ですが”でしょ?」
あっ…
「え、えと、その…」
ああ〜ん、もぉ…、どうして僕ってばこうもおバカなんだろう…
いっつも大事な時に言い間違えちゃったりするんだよ…
恥ずかしいったらありゃしない。
でも、僕の言い間違胃が功を奏したのか…
「お母さん、お茶を頼むよ」
場が少し和んだようにも感じた。
だから思い切って聞いてみることにしたんだ。
松本さんが、どんな風に僕のことを話したのかを。
その結果、僕はとんでもなく青ざめることになり…
翔くんのお母さんが淹れるてくれた激甘コーヒーの味も、楽しみにしていたケーキの味も、全く味わうことがないまま、翔くんのお部屋へと移動した。
だってさ、だってさ…
まさか僕がHIMEとしてAVに出演してたことまで言うとかさ、思ってないじゃん?
もぉさ、頭ん中真っ白だよ?