第34章 scene6:HIMEは君の中にずーっといるよ♡
僕の緊張をよそに、
「さ、入って入って?」
翔くんのお母さんは僕の手を引いた。
通されたリビングでは、銀縁の眼鏡をかけたおじさんが、ソファの真ん中に座って新聞を広げていて…
そのお顔が翔くんとそっくりで(笑)
僕はすぐにその人が翔くんのお父さんだって分かった。
「あ、あの…、ぼ、僕…」
ああ、ダメ…
昔っからそうだ…
ちゃんとご挨拶しなきゃって思うのに、緊張が頂点二達すると、つい吃ってしまって、言葉が上手く出てこない。
「えと…」
どうしよう…と思って翔くんを見つめると、翔くんはニッコリ笑ってから僕の肩を抱いて…
「親父、彼がこの間話した大野智くん」
ソファに座るように促しながら、僕を紹介してくれた。
ってゆーか、ご両親が見てる前で?
ちょっと大胆過ぎない?
でも、そのおかげなのか、少し緊張が取れたような気がする。
「あ、あの、大野です。えと、翔くんとはえと…」
やっばりこーゆー時って、全くの嘘ってわけじゃないけど、“友達”ってゆーべき?
それともちゃんと“恋人”ってゆーべき?
あー、どうしたら良いんだろ…
でも、翔くんは僕達の関係は話してあるって言ってたし、それに僕も嘘はつきたくないし…
ここは正直に…、なんて思ってたのに、
「まだ付き合い初めてそんなに日も経ってないけど、俺の恋人…で良いよね?」
翔くんに同意を求められて、僕は咄嗟に首を横に振り…かけたけど、すぐに縦に振り替えた。
そしてそのまま額が膝に着くくらいに頭を深々とさげると、
「あ、あの、ごめんなさい。僕みたいなのが翔くんの恋人で…」
別に謝らなきゃいけないような…そんな悪いことをしているつもりはないんだけど、どうしてだか謝罪の言葉を口にしていた。
翔くんは「どうして謝るの?」って言うけどさ…
だってさ、ずーっと新聞見たままで、僕とは全然目も合わせてくれないしさ、絶対怒ってるじゃん…?