第34章 scene6:HIMEは君の中にずーっといるよ♡
「ほら、笑って?」
緊張で引き攣る僕のお顔を、翔くんの両手が包み込む。
ふふ、あったか〜い♪
翔くんの手に包まれてると、自然と笑顔になれちゃうから不思議。
「うん、その顔すげぇ可愛い」
「ほんと?」
僕、可愛い?
「キスしたくなるくらい、可愛いよ」
もぉ…、翔くんたら♡
でも…、僕も同じかも。
だってさ、こーんなに近くに翔くんのお顔があるんだよ?
キスしたくなっちゃうに決まってんじゃん(笑)
「でも今は我慢かな…」
そう…だよね…
もし誰かに見られたりしたら、大変だもんね?
「その代わり…、後でたっぷりしようね?」
「え…?」
僕が聞き返すと、翔くんは僕の耳に唇を寄せる。
翔くんの息が…擽ったい。
「キス…、いっぱいしよ?」
「ふふ、ねぇ、キスだけ?」
「え…?」
翔くんのお顔が、ボッと火がついたように赤くなる。
「僕、キスだけじゃ満足出来ないかもよ?」
翔くんは知らないかもしれないけど、翔くんのキスって魔法みたいなモンで、翔くんにキスされると、身体の奥がジーンと熱くなって、それから…
あ〜ん、ダメダメ!
今はそんなことを考えてる場合じゃない!
僕は緩みきったお顔の筋肉をキュッと引き締めると、
「と、と、とにかく、僕頑張るから…」
何をどう頑張れば良いのかは分からないけど、とにかく頑張らなきゃ…
僕はケーキの箱をもう一度しっかりと抱え直すと、ちょっぴり引き攣り気味だけど、翔くんに向かって笑顔を見せた。
翔くんが好きだって言ってくれる、僕の笑顔を…
「よし、じゃあ…、行こうか?」
「うん…」
翔くんが玄関のドアを開け、「ただいま」と声をかける。
すると廊下の奥の方から、パタパタとスリッパの音が聞こえて…
「あら、大野くん…だったわよね? 良く来てくれたわね、いらっしゃい」
翔くんのお母さんの、ちょっぴり弾んだ声が僕達…ってゆーか、僕(?)を出迎えてくれた。