第34章 scene6:HIMEは君の中にずーっといるよ♡
松本さんお薦めのケーキ屋さんに寄って、おっしゃれ〜なケーキを幾つか選んで、お土産用に綺麗にラッピングして貰った僕は、箱の中でケーキが転がってしまわないように、しっかり抱き抱えて松本さんの車を降りた。
「潤兄ぃ、ありがとうね」
翔くんがドア越しに松本さんに頭を下げるけど、僕は緊張でそれどころじゃなくて…
とにかくケーキを落っことさないようにするだけで精一杯で…
「智…」
松本さんに名前を呼ばれても、返事はおろか反応することすら出来なかった。
でも耳だけはちゃんと松本さんの言葉を聞いていて…
後になってから、松本さんがどうして「ごめん」って言ったのか、その理由が分かるわけなんだけど…
だってさ、僕松本さんに謝られる理由なんて、“その時”は何一つ思い付かなかったんだもん。
だから、
「じゃあ、また…」って手を振る松本さんに軽く頭を下げるだけで挨拶を済ませ、轟音を響かせて走り去るド派手な車を見送った。
そして、
「入ろうか?」
言いながら翔くんが僕の腰に回った途端、途轍もない緊張感に僕の身体が、まるで石…いや、岩になってしまったかのように固まった。
当然、僕の腰に回った翔くんの腕にも、僕の緊張は伝わるわけで…
「ほーら、リラックスして?」
翔くんは言うけど、そう簡単にリラックスなんて出来るわけないじゃんね?
「あのさ、俺も今の智くんと同じだったよ?」
え…?
「俺も智くんのご両親に挨拶した時、すげぇ緊張してさ(笑)」
「そう…なの?」
そんな風には全然見えなかったけど?
凄く落ち着いてたし、それに男らしくて…
僕、思わずドキッとしちゃったんだよね〜♪
だってあの時の翔くん、とっても格好良かったんだもん♡
「智くんはさ、普段通り笑ってれば大丈夫だから、ね?」
「…うん」
って、それじゃ僕…、馬鹿っぽく思われない?