第34章 scene6:HIMEは君の中にずーっといるよ♡
松本さんの車の後部座席に二人して座って、僕達はこっそり…ってこともないけど、ずっと手を繋いでいた。
だって離れたくなかったんだもん。
本当はもっとピッタリくっつきたいけど、松本さんがバックミラーで常に僕達の様子を覗っては、ニヤニヤと笑ってるんだもん。
いくら僕でも、松本さんにニヤニヤされて、それでもベタベタは出来ない。
だから仕方なく手だけはしっかり握っておこうと思って♪
「で、どこに送れば良いわけ?」
どこ…、とは?
僕が首を傾げると、翔くんが少しだけ考える素振りをしてから、
「今日は家に帰ろうかな」
って言った。
「え、何で?」
僕、まだまだ翔くんと一緒にいたいのに…
「一応、まだ就職も決まってないし…」
そっか…、そうだよね…
フリーターが本職みたいな僕と違って、翔くんはちゃんとした会社に就職をしようとしてるんだもんね?
僕みたいに気楽には構えてらんないか…
「それにさ、今親父が帰って来ててさ…」
「お父さんが?」
海外赴任してるって聞いてたけど、そっか…帰って来てるのか…
だったら尚更なのかもね。
「分かった…。寂しいけど我慢するよ…」
はあ…、僕ってば翔くんと会うまではこんな寂しがり屋さんじゃなかったのにな…
どっちかってゆーと、一人で過ごす時間の方が好きだったのに、今はどうよ…
ちょっとの時間も翔くんと離れてたくないし、一人になった途端に寂しさが込み上げて来ちゃう。
恋人が出来ると皆こうなのかな…
二人でいる時間が幸せ過ぎちゃうからいけないんだよね?
でも翔くんが就職したり、逆に僕がバイトでも始めたりしたら、当然離れてる時間だって増えるんだから、少しは慣れなきゃね。
でもやっばり寂しいな…
僕は一人で眠るベッドの冷たさを想像して、ちょっぴり身体を震わせた。