第34章 scene6:HIMEは君の中にずーっといるよ♡
きっと凄く寂しそうなお顔をしてたんだと思う。
俯いてしまった僕のお顔を、翔くんが覗き込んだ。
「あの…さ、ウチ…来る?」
へ?
「ウチ…って、翔くんのお家に?」
いや、行ったことが無いわけじゃないよ?
お泊まりだってしてるし、お母さんにだって会ってるけどさ…
「でもお父さん…いるんでしょ?」
「そりゃ…、まあ…」
僕の勝手な想像だけど、翔くんのお父さんって、怖いとは違うんだけど、凄く厳しそうなイメージがあるんだよね。
「怒られたりしない?」
「どうして?」
だから僕みたいなのが突然行ったら…
しかも恋人だなんて知れたら…
普通の人なら、きっと頭に角が生えちゃうだろうし、もしかしたら翔くんのことだって…
「あのさ、どんな想像してるかは知らないけどさ、親父にもお袋にもちゃんと話ししてあるから…」
へ?
どゆ…こと?
「え、まさか僕と付き合ってるってこと?」
まさかと思って目を丸くする僕の横で、翔くんが「うん」と大きく頷く。
ってゆーか…、マジか…
「まあ…、お袋は最初っから気付いてたみたいだけどね(笑)」
え…、嘘でしょ?
だって僕、あの時はまだそこまで“好き好きオーラ”出してないし、なんなら自分がゲイだって悟られないようにしてたつもりなのに…
「だからさ、安心して? 親父もお袋も、智くんに噛み付いたりしないから…」
そうは言われても…
普通の人達が僕みたいな種類の人間をどんな目で見るかを知ってる僕は、やっばり気が引けてしまう。
それにいくら僕達の関係を知ってるっていっても、僕のせいで翔くんが軽蔑されたりするのは嫌だし…
「安心しろ」
僕が悩んでいると、見かねた松本さんが車を路肩に停め、
「翔の親は俺の親に比べれば、数倍…いや数百倍理解のある人達だから」
ミラー越しに僕を見ながら言った。