第34章 scene6:HIMEは君の中にずーっといるよ♡
テーブルの上で、ポストカードがひっくり返される。
でも翔くんはその瞬間を、しっかり目を閉じていたせいで見ていなくて…
「ね、ねぇ、どっち? 入ってる? 入ってない? どっち?」
僕の腕を掴んで揺さぶった。
「んと…ね、それが…ね…」
「入って…なかったんだ…ね?」
「えと、だから…さ…」
「あー、クソ!」
え…?
翔くんが両手で頭を抱え込む。
ねぇ、僕まだ何も言ってないんだけど?
「ねぇ、ちゃんと見て?」
今度は僕が翔くんの腕を掴んで揺さぶった。
でも翔くんは見事な“激ちん”状態で、全然取り合ってくれなくて…
「ふーん、いらないんだ? せっかく僕が丹精込めてサインしたのになぁ…、そっかぁ、いらないんだ?」
僕はポストカードをピッと取り上げると、元あったようにパッケージの中に挟んで、パチンと蓋を閉じた。
すると、それまで頭を抱え込んでいた翔くんがパッとお顔を上げた。
「今…、何て言った?」
「え?」
「サインがどうとか言った?」
「うん、言ったよ?」
ってゆーか、反応遅すぎ(笑)
「貸して?」
翔くんが僕の手から、DVDのケースを奪うように取り上げ、フーッと深呼吸をしてからパッケージを開ける。
そして中からポストカードを取り出すと、
「ぬぉぉぉぉっ…!」っと、まるで雄叫びのような声を上げて、ポストカードを胸に抱いた。
「ねぇ、そんなに嬉しい?」
「当たり前でしょ? HIMEちゃんのサイン入りだよ? しかも、このポストカードに使われてる写真て、HIMEちゃんのデビュー作の時のだし…」
え、そう…なの?
僕一応“本人”だけど、全然覚えてないや(笑)
「このさ、何の飾りもない、ともすればダサくも見える白の下着がさ、HIMEちゃんの可憐さを際立たせててさ…、堪んないんだよね♡」
「へ、へぇ…、そう…なんだ?」
うーん…、なんだろう…、すっごーくモヤモヤするってゆーか、僕…“僕”に嫉妬してる?
だってさ、ポストカードを見る翔くんの目、完全にハートになってるんだもん。