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H・I・M・E ーactressー【気象系BL】

第32章 scene6:僕はHIME…


僕が差し出した左手を、翔くんがそっと握る。

「本当に…こんなんで良いの?」

「うん」

「指輪が欲しかったら、今度一緒に…」

ねぇ、しつこいよ?

「僕はこれじゃなきゃ嫌なの!」

これ以外は、どんなに大きな宝石が着いてたとしても、どんなに高価な物だとしても、僕はいらない。

「分かったら、早く嵌めて?」

じゃないと僕…、浮気しちゃうよ?

ってのは冗談だけどね(笑)

翔くんが小さく息を吐き出して、クッションの上から小さなリングを指で摘む。

そしてゆっくりと僕の指に、小さな小さなリングが通される。

「ふふ、可愛い♡」

僕の指でキラリと光るソレは、昔子供の頃に近所の駄菓子屋さんで見たことのある、調節可能なステンレス製のリングに、ハート型にカットされた、プラスチックとも硝子とも区別のつかないような、青くて小さな飾りが着いている物で…

光に透かして見ると、本物の宝石にはとても敵わないけど、キラキラと輝いていて…

「凄く綺麗…。ね、翔くんもそう思わない?」

僕が言うと、翔くんは少し照れたように頭を掻いてから、小さく頷いた。

「翔くん、ありがとう…」

「え…?」

「僕、大事にするね?」

「う、うん…。で、でも、今度はちゃんとした物を贈るから、だから…、むぐっ…」

ふふ、翔くんがしつこいのがいけないんだよ?

だから僕、はしたないかなぁ…なんて思いつつも、翔くんの肩に両腕を回すと、お喋りの止まらない翔くんの口を、僕の唇で塞いだ。

すると、その瞬間を待っていたかのように、周りから拍手や歓声が上がって…

でも僕達の唇が離れることはなくて、一瞬離れたかと思ったら、今度は翔くんの方からキスをしてくれた。

そして、長い長いキスの後、僕の頬が翔くんの両手に包まれて…

「一生…なんて約束は、今は出来ないし、絶対幸せにするなんてことも、今は言えないけど、でも大事にするから…」

僕にとっては、これ以上ないってくらいの、最高級の言葉をくれた。
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