第32章 scene6:僕はHIME…
僕は翔くんの腕に自分の腕を絡めると、得意の”HIMEスマイル”を浮かべて翔くんを見つめた。
途端に照れてお顔を真っ赤にする翔くんが、格好いいんだけど可愛く見えて(笑)
僕がクスリと笑うと、翔くんが唇を尖らせる。
ふふ、拗ねたお顔も可愛いよ♡
「あの…さ、一つ聞いて良い?」
「うん、なぁに?」
「足ってさ、どっちから出せば良いと思う?」
へ?
急に真剣なお顔をするから何事かと思ったら…ふふふ、やっぱり翔くん可愛い♡
「どっちでも良いんじゃない?」
だってそんなこと聞かれたって、僕も知らないもん。
「そっか…、じゃあ”せーの”で右足からで良い?」
「うん」
僕が頷くと、翔くんはスッと息を吸い込んでから、僕だけに聞こえるように小さな声で”せーの…”と掛け声をかけた。
翔くんn合図で同時に右足を踏み出した僕達は、赤い絨毯の上を一歩一歩、ゆっくりと前に進んだ。
凄く幸せな気分だった。
本当に結婚するわけでもないし、あるかないかは…正直分かんないけど、来るべき時に向けてのリハーサル的な物だって分かってるけど、それでもこうして翔くんと並んでバージンロードを歩けることが、心から嬉しかった。
そう…、あの日のことを思い出すまでは…
「智くん? どうしたの?」
突然足を止めてしまった僕を、翔くんが心配そうに覗き込む。
僕はせっかくの幸せな気分を台無しにしちゃいけないと、小さく首を横に振ってみせるけど、そのお顔はきっと引き攣っていて…
「顔色悪いけど、大丈…夫?」
「う…ん…」
大丈夫って言いたい。
でも、あの日のことを思い出すと、とても”大丈夫”って言えなくて…
「ねぇ、これって撮影とかじゃないよね?」
「え? どういう…こと?」
「だ、だから、急に変な人達が出て来て、僕のこと…」
襲ったりしないよね?
違うよね?