第32章 scene6:僕はHIME…
翔くんに手を引かれ、コテージの中に入る。
僕がコテージだと思っていた建物は、実はチャペルになっていて…
「え、ねぇ、これって…どーゆうこと…?」
僕の頭は更に混乱した。
だって、僕がウェディングドレスを着ようと思ったのは、あの時翔くんに見せられなかったのもあるけど、翔くんが見たいって言ってくれたからで…
こんなの想像もしなけりゃ、考えてもなかったんだけど…?
「本当はね、写真だけで良いって思ったんだけどね、潤兄ぃに相談したら、こんなことになっちゃってさ…」
なるほど、確かに松本さんなら考えそうなことかも(笑)
「一応“真似事”ではあるんだけど、迷惑…だった?」
困惑する僕を見てか、翔くんが表情を曇らせる。
そんなお顔をさせたかったわけじゃないのに…
僕はただ、今自分が置かれている状況が理解出来なくて、でもすっごく嬉しいことだけは分かってて…
とにかく混乱してる…って表現が一番しっくり来る。
だって僕達…、出会ってからはもう随分経つけど、ちゃんと恋人として付き合い始めたのって、まだ一週間しか経ってないんだよ?
なのに、いくら真似事とは言っても、こんな結婚式みたいなこと…、驚かずにいられる?
「智…くん? 大丈夫? もし嫌なら止めようか…?」
え…?
「俺はさ、HIMEちゃんのウェディングドレス姿見られただけで、もう十分満足したしさ、別にこんな大袈裟なことしなくても…」
ううん…、それはダメ…
そりゃさ、付き合ってまだ一週間しか経ってないのに、結婚式とかさ…、変だと思うよ?
気が早過ぎるって思うよ?
でも…、でもさ…
「しよ?」
「え…?」
「結婚式…しよ?」
「で、でも…」
「いいじゃん、遊びでもなんでもさ、練習だと思えば良くない?」
いつか来る“その時”のためのリハーサルだと思えばさ…
だって翔くん、しっかりしてそうに見えるけど、案外おっちょこちょいなんだもん(笑)