第31章 日常16:僕の彼氏を紹介します
「あのさ、智はさ、翔くんが外見だけで人を好きになるような人だと思ってんの?」
え…?
「もしそうだとしたら、智は翔くんのことそんだけの人間としか見てないってことだよね?」
違う…、そんなこと僕は一度だって思ったことない。
現に、僕がゲイだと知っても、翔くんは態度を一切変えることはなかった。
だから僕は翔くんのこと好きになったんだし…
「分かるよ? 智が不安になる気持ち。私も雅紀と付き合い始めの時はしょっちゅうだったし…」
「和…も?」
「当たり前でしょ? だって、画面の中の私と、実際の私は、同じ人間でありながら、全く別の人間なんだもん。だからわざとセックスの時に演技したりもしたし…」
和もそんな思いをしてたなんて…、僕、全然知らなかったよ。
「でもさ、いくら上手に演技したって、相手には伝わるんだよね…」
「そう…なの?」
僕は実際”演技”ってのを、一度もしたことないから…
頑張って演技しようと思ったこともあったけど、結局上手く出来なかったし、そもそも演技ってどうすれば良いのかが良く分からない。
「特に好き合った同士なら、尚更ね」
「そう…なんだ…」
「私ね、雅紀に言われたことあるんだよね、”俺に抱かれることは、和にとって仕事の延長なのか”って…」
え…、あの相葉さんがそんなことを…
「ハッとしたよね…。だって、私は単純に雅紀が喜ぶと思って演技してたけど、雅紀にはそれが仕事の延長に見えちゃったんだもん」
「ショック…だった?」
「そりゃそうよ(笑) でもね、雅紀は一切私のこと責めなかったわ。それどころか、演技なんて出来ないくらい、滅茶苦茶に私のこと抱いてさ、最後に言ったの…」
何…て?
「ありがとう、って…。本当の自分を見せてくれてありがとう、って雅紀言ったの…」
そう言って和は僕を引き寄せ、そんなに広くはない胸の中に僕をスッポリ収めた。