第31章 日常16:僕の彼氏を紹介します
和の手が、僕の背中をゆっくり上下する。
不思議なんだけどさ、それだけで凄く安心する。
「心配しなくて大丈夫。翔くんはちゃんと智のこと見てるから」
本当…に?
「って言うか、今は智のことしか見えてないんじゃないかな」
「え…?」
思わずお顔を上げた僕を見下ろし、和がニヤリと笑う。
「だぁってさ、智のこと抱いてる時の翔くん、すっごい愛おしそうな目で智のこと見てるんだもん、私嫉妬しちゃったわよ?」
うん、それは僕も感じていた。
翔くんに抱かれてる時、翔くんが触れた部分が、凄く暖かくなって、幸せで満ちて行くのを感じたから…
「だからね、智が思ってる以上に、翔くんは智のこと想ってくれてるから…、ね?」
「うん…」
「それにさ、さっきも言ったけど、智…、HIMEの時よりも、うんと…何十倍も可愛かったし、綺麗だったよ?」
「そんなに…?」
「雅紀がまた暴走すんじゃないかって心配になるくらいにね?(笑)」
え、それはちょっと困るかも(笑)
「もうちょっと自分に自信持ちな? 智は、HIMEみたいに、可愛い服やメイクで飾ったりしなくたって、十分可愛いし、私は今の智の方が好きだよ?」
そう…、僕はいつだって自分に自信が持てなかった。
でもメイクをして、可愛いお洋服を着て…、HIMEになることで、少しずつだけど、自分に自信が持てるようになったのは事実。
HIMEと僕…、比べていたのは、もしかしたら自分自身なのかもしれない。
HIMEじゃないと、愛されないって…
HIMEじゃないと、愛される資格もないって…
勝手に思い込んでいたのかもしれない。
「僕、間違ってた。僕…、やっぱりバカだ…」
「そんなことない。智は間違ってないし、馬鹿でもないよ? ただ本気の恋してるだけなんじゃない?」
本気の…恋?
僕が首を傾げると、和は僕の髪を、クシャッと混ぜてから、
「まぁ…、まだままごとレベルの恋だけどね?」
って肩を竦めてクスリと笑った。