第6章 scene2:ファッションホテル
所々消えたランプを横目に見ながら、奥へ奥へと歩を進めると、見知った顔が僕に向かって片手を上げた。
今日の監督さんの国分さんだ。
「おはようございます♪」
僕は満面のHIMEスマイルで国分さんに駆け寄ると、国分さんの腕に自分の腕を絡めた。
国分さんとは何度もお仕事をしているから、ちょっと馴れ馴れしいかなぁ…と思いつつもへっちゃら♪
「HIMEちゃん、今日は一段と可愛いね。凄く似合ってるよ、その服」
「そうですかぁ? ふふ、嬉しい♡」
ロリータファッションってゆーの?
これまで着たこと無かったから、本当はちょっと自信なかったんだよね…
でも国分さんに褒められたから、ちょっと自信ついちゃったかも♪
「あのぉ、NINOさんは? まだ?」
「ああ、NINOならさっきから中でお待ちかねだよ」
言いながら、国分さんがドアの横にあるブザーを押した。
ああ、何でだろう…、理由は分からないけど、すっごく緊張する。
僕は息をフッと吐き出すと、絡めていた腕を解き、金髪クルクルツインテールと、淡いブルーのフワフワワンピースの裾の乱れを直した。
そしてゆっくり開くドア。
そこからひょっこり顔を出したのは…
「HI〜MEちゃん♡ お久しぶり♪」
黒いサラサラロングヘアを揺らし、ニッコリ微笑むNINOで…
僕が着ているのと同じデザインの、色違いのワンピースを着ている。
あれ?
今日は“男役”だった筈なのに…、どうして?
てっきり男の子の格好をしているとばかり思っていた僕は、ちょっぴり戸惑ってしまう。
「あ、あの…、今日は宜しくお願いしま…す…」
「くく、こちらこそ宜しくね?」
ああ、やっぱりNINOって可愛い…っていうよりか、美人?
こんな可愛くて綺麗な人に僕は抱かれるんだって…、そう思ったら僕の心臓が急にバクバク鳴り始めた。