第6章 scene2:ファッションホテル
「ね、ね、そんなとこに立ってないで、早くお部屋入ろ? 凄く可愛いお部屋なんだよ?」
NINOが僕の手を掴んで、半ば強引に部屋の中へと引き込む。
厚底に慣れてない僕は、一瞬足が縺れて転びそうになるけど、憧れのNINOの前で転んだら恥ずかしいと思って、何とか踏ん張る。
ってゆーか、美人なのに案外力強いのね?(笑)
「見て見て♪ このベッド、可愛くない?」
ピンクとゴールドに彩られたカバーがかけられた円型のベッドは、通路と同じくピンク一色の空間にあって存在感抜群で…
「うわぁ…」
見てるだけでドキドキしちゃう♪
「ね、こっちも見て? このドレッサー、すっごく素敵じゃない?」
「ホントだぁ♡」
しっかりLEDライトも付いてて…あ!
これってもしかしてプリンセスミラーってやつ?
キャッ、嬉しい♪
「あ、あのぉ、僕ここでメイク直しても良いですか?」
ろくな照明も無い上に、大急ぎで準備したから、メイクが中途半端になっていたことを思い出した。
「くく、そのままでも十分可愛いのに?」
それは分かってるけど…、せっかくNINOに抱かれるのに、中途半端な僕じゃ申し訳ないもん。
僕はドレッサーの前にメイクボックスを広げると、NINOの見ている前でメイクを始めた。
うん、やっぱりライトがあると全然違う♪
僕は鏡に映る自分の顔を、右へ左へと角度を変えながら隈無くチェックを繰り返し、アイシャドーやチークを顔に乗せて行く。
そして最後にお気に入りのグロスを手に取ったところで、
「貸して? 私が塗って上げる♪」
NINOが僕の手からグロスを取り上げた。
「あ、でも…」
「いいから♡ ほら、こっち向いて?」
僕は言われるまま椅子事身体をNINOの方に向けると、唇を薄く開きNINOを見上げた。