第6章 scene2:ファッションホテル
プラスチックケースを抱えた長瀬さんの後に着いて、お気に入りのふわもこブランケットを肩に羽織り、駐車場から直結のフロントを通る。
部屋には既に監督さんやスタッフさんが入ってるから、当然僕達は素通り♪
でも色々気になるから、あちこちキョロキョロ見回していたら、
「グズグズすんな、置いてくぞ」
先にエレベーターに乗り込んだ長瀬さんに怒られちゃった。
「ファッションホテルって聞いてたから、どんなオシャレなホテルかと思ったら、ただのラブホじゃん…」
キラキラしたネオンに、タイプ別の部屋を写したパネル。
実際に利用したことはないけど、ドラマとかではよく見かける光景だ。
「今時はラブホのことをファッションホテルって言うんだとさ…」
「ふーん…」
ラブホだろうがファッションホテルだろうが、結局ヤルことは一緒なのにね?
変なの(笑)
片手にメイクボックスを下げ、胸元にかかる金髪クルクルツインテールを指に絡めていると、エレベーターが止まり、ピンク色のドアが左右に開いた。
その瞬間、僕の中のHIMEスイッチがピコーンと派手な音を立てて入った。
「うわぁ、なんて可愛いの♡」
ピンク一色の壁、至る所に飾られた花と大きなリボン…
これでHIMEのテンションが上がらない筈がない。
「凄い凄い♪」
僕はスキップしたい気持ちを抑え、ハート模様がキュートなフカフカカーペットの上を、足元を確かめながら先へ進んだ。
だってね、衣装と一緒に用意されてた靴ね、厚底…って言うの?ソールもすっごく厚いし、ヒールだって負けないくらいに高くてさ…
余所見してたらコケちゃいそうなんだよね…
しかも、一応ストラップベルトが付いてるから脱げはしないけど、けっこう重たくってさ…
こういうの、慣れてないから歩くの大変なんだよ…