第6章 scene2:ファッションホテル
それにしても…
女の子の服つて、どうしてこうも着にくいんだろ?
ファスナーとかさ、手届かないし…
僕はファスナーを諦めて、履いていたズボンを脱ぎ、セットで入っていた超長い靴下を履いていから、ガーターベルトを締めた。
後は…と、メイクだけど…
こういう服の時って、ちょっと濃いめの方が良いのかな?
用意されてたウィッグも、超ド派手な金髪クルクルツインテールだし…
僕は車のルームランプと、スマホのストロボ機能を利用して、手早くメイクを済ませると、ウィッグを被った上から、服と共布で出来たヘッドドレスを着け、顎の下でリボンを結んだ。
「うーん…、ちょっと納得いかないけど…、後は明るい場所で手直しすれば良いか…」
僕はカーテンを開けると、時計を気にする長瀬さんの肩をツンと突っついた。
「お・ま・た・せ♡」
得意のHIMEスマイルを添えて(笑)
「準備出来たか…。じゃあ行くか…、NINOがお待ちかねだ」
「はぁい♡」
僕はやっぱり一緒に用意されていた靴に履き替えると、ピョンとばかりに車から飛び降りた。
「あ、ねぇ、お願いがあるんだけど…」
「なんだ?」
トランクからいつものように荷物を下ろす長瀬が、返事もなく眉間に皺を寄せる。
ってゆーか、そんな怖い顔しなくても…
「あのね、ファスナーが出来なくて…」
言いながら僕は長瀬さんに背中を向けた。
「なんだ、そんなことか…」
長瀬さんは溜息混じりにトランクをバタンと閉めてから、全開になっていたファスナーを上げてくれた。
「ふふ、ありがと♡」
「つか、お前寒くねぇか?」
「え? あ、そう言えば寒いかも…」
そうだよね…
この季節に、ノースリーブで、しかも胸元ざっくりのワンピースなんて…寒くないわけないじゃん(笑)