第6章 scene2:ファッションホテル
「なんか…凄いね、今日の衣装…」
これまでも可愛い服は色々着て来たけど…、こういうのはもしかしたら初めてかも…
だってついこの間の撮影はセーラー服だったし、その前は…、えっと…
あ、そうだ思い出した、その前は確かエプロンだけだったんだ!
下着もなーんも無しに、ピンクの丈超短めのエプロンだけ着けてさ…
あれは流石に恥ずかしかったな(笑)
それに比べたら…って思わないでもないけどね?
「まあ、NINOからの指定だからな…。HIMEなら絶対似合うだろうからってな…」
「へえ、そうなんだ…」
確かに、普段の僕なら絶対に“ない”レベルの服だけど、HIMEなら…ゲイ専門AV界に彗星の如く現れたアイドルHIMEならば、確実に似合っちゃうよね(笑)
僕は手にした衣装を、ビニールに入ったまま裏、表とひっくり返すと、長瀬さんに見えないように、こっそり笑った。
でも…
「おい、ンなもん眺めてニタついてる場合じゃねぇぞ?」
長瀬さんが後ろを振り返ることなく言うもんだから、僕は一気に顔が熱くなる。
ってゆーか、長瀬さんて絶対後ろにも目あるよね?
「予算の都合上、控え室なんてもんは用意出来てないから、ここで準備済ませなきゃなんねぇからな…」
「え、ここで?」
出来るよ?
車でっかいし、カーテンで目隠しすることだって可能だもん。
でもメイクもここで… ってなると、ちょっと自信ないかも…
でも仕方ないよね…
僕は小さく肩を落とすと、ダウンを脱いだ。
そしてセーターの裾に手をかけたところで、バックミラー越しに僕を見る二人の視線に気が付いて…
「もう、見ないでよ」
僕は運転席と後部座席の間を隔てるように、カーテンをピシャリと引いた。
そりゃさ長瀬さんには、もう隠す場所なんてないってくらいに全部見られちゃってるけどさ、やっぱり恥ずかしいもん。