第6章 scene2:ファッションホテル
その後も、僕は企画書と睨めっこを続け…
今回の撮影場所でもあるファッションホテルが見えて来た頃になって漸く、ある一つの答えに辿り着いた。
「これさ…、もしかして僕がNINOに抱かれる…ってこと?」
どれだけ穴が空く程見つめても、僕とNINOの名前しかないところを見ると、そういうこと…だよね?
「そういうことなの?」
「まあ…、そういうことだろ? …つか、やっと気付いたのかよ…」
長瀬さんが呆れ気味に肩を落としたのが、丁度真後ろの席にいても分かった。
その様子を、運転手の城島さんが、器用にハンドルを右へ左へと切りながら、クスクス肩を揺らしながら見ている。
そっか…、僕はあの“NINO”に…
以前企画物のオムニバスで一度共演したことはあるけど、その時は確か僕とNINOは双子の姉妹で、突然家の中に忍び込んで来た二人組レイパーに襲われちゃう、って設定だったんだよね…
あの時、僕の目の前でレイプ(勿論、お芝居だけどね?)されてるNINOを見て、僕思ったんだ…
すっごく可愛い、って…
ううん、可愛いだけじゃない、すっごくセクシーでエロティックで、でもリアルで…
NINOって凄いなって、そう思ったんだ。
そのNINOとまた共演出来るってだけで驚きなのに、僕がNINOに抱かれるなんて…
「どうしよ…、僕緊張してきちゃった…」
今まで緊張なんて、このお仕事を始めてからは一度もなかったのに…
でもそんなことも言ってられないから、僕はファイルをバタンと閉じると、車の最後部…トランクになっている部分を覗き込んだ。
「ねぇ、もしかして…だけど、今日の衣装ってこれ?」
僕は、例のごとくクリーニングのビニールがかけられた、やたらとフワフワしたワンピースを持ち上げた。