第30章 日常15:こんなの初めて♡
すると、翔くんは何も言わずに僕の額にキスをしてくれて、それからギューッて…
内蔵も全部潰れちゃうんじゃないかってくらいの力で、僕を抱きしめてくれた。
だから僕も翔くんに負けないくらいの力で、翔くんを抱きしめ返した。
「ねぇ、智くん…?」
「うん…」
「もし…さ、智くんが“嫌だ”って言うなら、無理にとは言わないけどさ…」
「うん…」
翔くんが喋る度に、首筋に熱い息がかかって、擽ったいんだけど、凄くドキドキする。
「智くんのこと、抱きたい…」
「え…?」
それは、僕自身予想してたことだったし、期待だってしてた。
でもいざとなると、すぐに返事をするのを躊躇ってしまう。
「あ、も、勿論、断ってくれても…」
「ううん、そうじゃないの…、嫌じゃない…。けど…」
だって僕だって翔くんとそーゆー関係になりたいって、ずっと願ってたから…
「けど、何…?」
「翔くんが本当に抱きたいのは、“僕自身”なのか、 それとも僕が“HIMEだったから”なのか、どっち?」
ずっと考えてたんだ…
もし、翔くんの答えが後者だだたら…、その時は僕はこの気持ちに蓋をしなきゃ、って…
だって僕は、“HIMEとしての僕”じゃなくて、“僕自身”を愛して欲しいから…
「どっち?」
なかなか答えない翔くんに、特に急かすわけでもなく言うと、僕の背中に回った翔くんの手に、キュッと力が入ったのが分かった。
「智くんに告白した時にも言ったと思うけど、確かに最初は智くんがHIMEだから…って思ってた。でも今は違うよ?」
ねぇ、それって…?
「今は、智くんが好きだし、智くんじゃなきゃ嫌だ…っつーか、それじゃ答えになってないかな…?」
ううん、そんなことない…
翔くんが一生懸命考えて、それで出した答えなんだもん、それだけで十分だよ…
「ねぇ、僕からもお願いしても良い?」
「何…を…?」
「抱いて…?」
HIMEとしての僕じゃなくて、本当の…素顔の僕を抱いて欲しいの…