第30章 日常15:こんなの初めて♡
オートロックを解除して、ついでに玄関ドアのロックも解除して、落ち着きなくリビングをウロウロする。
だってね、着替えをしようにも、とこに何を仕舞ったのか、一週間留守にした結果忘れちゃったんだもん。
多分冷静になれば思い出せるんだろうけど、残念なことにそんな余裕は、今の僕にはない。
翔くんが来るってことは、つまり“そーゆーこと”に発展する可能性が、すっごーく高いってことだから。
だから、ちゃんとシャワーも浴びて、全部綺麗にして、それからお着替えもしておきたかったのにさ…
はあ…、僕のおバカ…
あ、勿論発展しない可能性だってあるわけだから、それはそれで残念だけど、ちょっぴりラッキーって思えなくもないんだけどね?
でも、別れ際に“後で”って言った時の翔くん、凄く赤いお顔してたし、多分そのつもり…だよね?
はあ…、どうしよう…
カメラの前で裸になるのだって、ここまで緊張したことなかったのに、今はありえないくらい心臓がバクバク言ってる。
僕は少しでも気持ちを落ち着けようと、翔くんを待つ間、何度も深呼吸を繰り返した。
そして…
インターホンが鳴って、玄関のドアが開けられたと分かった瞬間、僕はソファーの上でバスタオルを頭から被って、身体を丸めた。
恥ずかしかったんだもん…
経験豊富な筈なのに、こんなに緊張してるなんて、おかしいって…
絶対笑われるって…
そう思ったら、凄く恥ずかしかった。
でもそれは僕が得意な“勝手な思い込み”ってやつで…
スリッパを履いた翔くんの足音が徐々に近くなって、ソファーのすぐ傍でピタリと止まったかと思った瞬間、僕はバスタオルごと翔くんの腕に包まれていた。
「ちゃんと顔見せて?」って…
「笑わない?」
「何を笑うの?」
「いいから答えて?」
「うん、笑わないよ…、絶対…」
翔くんの“絶対”はちょっぴり信用出来ない(前科あるからね)けど、僕は翔くんのその言葉を信じて、頭に被っていたバスタオルの隙間から、お顔の半分だけを出した。