第29章 日常14:はじめの一歩
出掛けに慌てなくて済むように荷物を纏め、机の上に置く…けどさ、不思議だよね?
確か、マンションを出る時は、突然のことだったし、まさか一週間もいるつもりもなかったから、スマホと財布と部屋の鍵しか持って来なかったんだよ?
ほぼ手ぶらって言っても良い状態だったのに、どうしてこんなに荷物が増えちゃったの?
謎だ(笑)
ま、駅までは母ちゃんが車で送ってくれるし、向こうに着いたら潤さんがお迎えに来てくれるみたいだし、ちょっとくらい荷物が増えたって問題ないか♪
「よし、じゃあ…寝る?」
僕が準備を終えたタイミングで、スマホにアラームをセットしていた翔くんがベッドの上で両手を広げた。
「えぇ~、まだ早くない? だってまだ九時だよ?」
いくら早起きって言ったって、寝るにはまだ早すぎる気がするんだけど…
「あ、じゃあさ、アルバム見せてよ」
僕を腕の中に引き込みながら、翔くんの視線が漫画がズラリと並んだ本棚に向けられた。
「アルバムって…、僕の?」
「当然でしょ?(笑)」
「いいけど…、笑わない?」
「絶対笑わない!」
…って言ったよね?
なのにさ、翔くんたらさ…
「くくくく…、あははは…」って…
目に涙いーっぱい溜めて、お腹まで抱えちゃってさ、大笑いするんだもん…
そりゃさ、小さい頃の僕は、いかにもトンチが得意そうな坊主頭で、自分で見たって笑えて来るけどさ…
でもそこまで笑わなくても良くない?
酷いよ、翔くん…
「もぉ…、今度絶対翔くんのも見せてよ?」
んで、僕がされた以上に大笑いしてやるんだから!
「いいけど、俺のは智くんの程面白くないよ?」
それでも良いもん!
「つか、もうそろそろ寝る?」
言われて時計を見ると、あと数分で日付が変わる頃で…
「本当だ…、もう寝ないと朝起きらんなくなっちゃう…」
僕はアルバムを本棚に仕舞うと、僕に向かって広げられた腕の中に飛び込んだ。
「おやすみ、智くん」
「おやすみ、翔くん」
僕達は軽いキスを何度か繰り返して、眠りに落ちて行った。
翌朝、翔くんの好み…なのかな、とんでもなく煩い音楽に叩き起こされた僕は、騒音の中でもまだ眠り続ける翔くんの肩を揺らした。
ってゆーか、寝起き悪すぎ(笑)