第29章 日常14:はじめの一歩
仲直りのキスをして、再びリビングに戻ると、いつの間にお風呂から上がったのか、父ちゃんがソファーでビールを飲んでいて…
何だかすごーく気まずそうなお顔をしていた。
「さ、ご飯にしましょ? 今日はお姉ちゃんが手伝ってくれたから、助かっちゃった♪」
母ちゃんが冷蔵庫から缶ビールを取り出しながら、僕と翔くんに向かってウィンクを一つする。
「座ろ? 僕、もうお腹ペコペコだよ」
「くくく、俺も(笑)」
慣れない力仕事したから、そうだよね?
僕達かわ並んで座ると、父ちゃんも飲みかけの缶ビールを手に、ソファーからダイニングへと移動して来た。
「いただきま〜す♪」
父ちゃん以外の全員で手を合わせ、一斉に料理に手を伸ばす。
「んふ、おいひぃ〜♡」
「んまっ!」
「あ、これ絶対翔くんが好きな味だから、食べてみて?」
「え、どれどれ? あ、んまい!」
「でしょ?」
「あ、じゃあ今度はこれ食べてみて?」
言いながら僕は翔くんのお皿に、翔くんが好きそうな物をせっせと運んだ。
父ちゃんも母ちゃんも呆れ顔でその光景を見てたけど、僕は気にしない(笑)
翔くんが美味しそうに食べてる姿を見ると、僕まで幸せな気分になれるから。
「あ、そう言えば…、今日棟梁からバイト代だってお金貰ったけど、僕、明日からもう行かなくても良いってことなの?」
気になっていたことを父ちゃんに投げかけた。
父ちゃんたら、お酒飲むとすぐ寝ちゃうから、酔っ払う前に話さないとだから…
「まあ…、そういうことだな」
「じゃあ僕もう帰っても…?」
「あら、もう少しゆっくりしてけば良いのに」
母ちゃんはそう言うけど、新しく借りたマンションの部屋の片付けもまだ完璧ではないし、それにいくら(今のところ)お金に余裕があると言っても、そう何日も留守にしておくのは、流石に家賃が勿体ない。
「ああ、好きにしろ」
「本当? じゃあ僕、明日帰るね?」
母ちゃんの手料理が食べられなくなるのは寂しいけど、仕方ないよね?