第29章 日常14:はじめの一歩
無自覚な自分にちょっぴり恥ずかしさを感じながらも、
「そろそろ上がらないとね?」
って言われて、コクンと頷いた僕は、それまでお股を隠していた手を翔くんの肩に絡めた。
「抱っこ♡」って(笑)
すると翔くんは、暫くの間”う~ん”と唸ってから、肩に回した僕の手を解いた。
え、何で…?
「足でも滑らせて、智くんに怪我させたらいけないから、抱っこは後でね?」
あ、そっか…
僕を抱っこするのが嫌なわけじゃなくて、僕のことを考えてなんだね?
ふふ、翔くんて優しい♡
あ、でも、
「絶対? 今日も抱っこして寝てくれる?」
お約束だけはちゃんとしとかないとね?
翔くんはお口だけの人じゃない、ってことは良く分かってるけど、僕はやっぱりちゃんとした…確約ってゆーか、そーゆーのが欲しくなってしまう。
そりゃさ、そんなの必要ないって思われるかもしんなけど、偏見の中で生きてきた僕達みたいな…ってゆーか、少なくとも僕は…だけど、約束してくれるだけで、安心も出来るし、その約束が守られた時に得られる幸せだって大きい。
翔くんはこんな僕のこと、面倒くさいとか思うのかな…
「ねぇ、約束…してくれる?」
「勿論だよ」
ふふ、嬉しい♪
「じゃあ…、僕先上がるね? あ、でもあんまり見ないでね?」
今までカメラの前で散々裸になって、セックスもオナニーだってして来たのに、変に思われるかな?
でもさ、翔くんは特別なんだもん。
もう見られちゃったって分かってても、やっぱり恥ずかしい。
「分かった。じゃあ俺は、智くんがパンツ穿いてから上がるから」
「うん」
翔くんが僕の額にチュッてキスをしてくれて、漸く僕は湯船から上がった。
普段カラスの行水並にしかお風呂に入らない僕なのに、翔くんと一緒ってこともあって長風呂してしまったせいか、頭がフワフワしてるような気がするけど、逆上せただて程でもないことに、、内心ちょっぴりホッとした。